巨額工事費が世間の批判にさらされ、当初のザハ案が白紙撤回された新国立競技場。見直し案も着工が1年以上遅れ、懸念含みの問題案件と見られてきたが、今年11月末に計画通り竣工を予定する。受注した大成建設JVは周囲の赤字工事予想を覆し、黒字化の気配さえある。
(ダイヤモンド編集部 松野友美)
2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催まで残り450日を切った。メーンスタジアムとなる新国立競技場の周辺からは、屋根の形が出来上がっているのが見える。巨額工事費をめぐる大騒動で着工が遅れ、開催に間に合うのか、短い工期で費用がかさむのではないかと懸念されてきたが、実際はどうなっているのか。
新国立の工事費は、12年当初の計画で1300億円程度だったものが、翌年の試算で最大3462億円まで膨れ上がった(下図参照)。
大幅な増額には、デザイン募集を経て決まった建築家の故ザハ・ハディド氏による奇抜なデザインの実現が難しかったことが第一にある。労務費や資材価格の高騰、20年を目指したホテルやオフィスビルなどの再開発で建設工事の需要が膨らんだことも影響した。
巨額工事費が世間から大きな批判を浴びると、発注者の日本スポーツ振興センター(JSC)や国は、設計の部分的見直しや規模縮小の検討を重ねた。それでも予算と現実の差は大きく、15年に安倍晋三総理がザハ案を白紙撤回した。
撤回後、予算の上限は工事費約1490億円、設計・監理等費で40億円に設定された。上限ぎりぎりの金額で大成建設、梓設計、隈研吾建築都市設計事務所による共同企業体(JV)が16年に契約。新デザインでプロジェクトを再開した。