18年度は最高益を達成したキリンホールディングス。3年をかけて不振海外事業をリストラし、国内事業を立て直した磯崎功典社長に、今後の成長戦略を聞いた。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

キリンホールディングスの磯崎功典社長いそざき・よしのり/1953年生まれ、神奈川県出身。77年3月慶應義塾大学経済学部卒業、77年4月キリンビール株式会社入社。88年米国コーネル大学ホテル経営学部留学、91年事業開発部(ロサンゼルス駐在)、95年ビール事業本部企画部、12年キリンビール株式会社代表取締役社長、15年3月より現職 Photo by Masato Kato

――18年度までの前中計では「キリンの再生と再編」を掲げていました。

 2014年12月に三宅(占二社長:当時)さんに社長就任を告げられ、考えたのは「このままではキリンはもたない」ということでした。

 国内のキリンビバレッジは営業利益率1.5%という低収益の体たらく。さらに、過去に巨額を投じてM&Aで取得したブラジル事業とオーストラリアの乳業事業は非常に重篤な状態にありました。私は社長の仕事は10年先の成長戦略を考えることだと思っています。しかし、それを実現に移すにも、抱えているこれらの課題を解決しなければならなかった。

 まずブラジルです。売らなきゃならないわけですが、そのためにはそれなりの体裁にしないと誰も相手にしてくれない。社長就任翌月の15年4月にブラジルに行き、当時のジーノ・ドメニコCEOに会って話を聞きましたが、質問に対する核心を突く答えはゼロ。帰りの飛行機の中で更迭を決めました。

 その後新たに任命したCEOの元、成果は出てきましたが、そもそも黒字化が目的ではない。黒字になったところでマーケットシェアは十数%。ブラジルではアンベブがビールシェアの過半数を握るリーダーであることは変わらないからです。なので、黒字になる前にハイネケンに売却を決めた。