――ブラジル事業は三宅前社長が約3000億円で取得した事業です。ドメニコCEOも三宅さんが選任しました。よく思い切りましたね。

 特に本人には相談しませんでしたね。過去の成功体験に漬かっていてもろくなことはない。私個人が昔の経営トップに忖度して、判断が遅れたり間違ったりして一番迷惑するのは社員です。

 いわゆる伝統的なキリンの人だったら忖度したかもしれないですが、これは私の性格ですね。キリン本体を計15年離れていて、その間よその経営者を見たり、アメリカやフィリピンにいたり、自分でホテルを経営したりしていましたし。

前任社長のM&A案件を続々売却

――もう一つの課題事業のオーストラリア乳業事業は、加藤壹康前々社長が08年までに計3780億円で買収した案件で、19年度第1四半期に571億円の減損損失を計上するに至りました。

 これも本人(加藤前々社長)には売却の相談はしなかった。その方がいいと思ったんで。ただ、ここに至るまで投資家や社員、関係者などいろいろな人の話は聞き、その上で自分でやめるべきだと判断しました。この事業は売り上げ規模が大きいだけに、営業利益率を押し下げる要因になってしまう。

 オーストラリア事業子会社のライオンは、アルコール事業では強いものの乳業は弱い。また、もしキリンが日本で明治や森永乳業などの規模の乳業事業を持ち、ノウハウがあるならともかく、そうではない。特に白牛乳に関しては赤字です。スーパーのPB(プライベートブランド)と差別化できる要素もなく、ひとたび判断を間違うと命取りになりかねない。キリンがやるべき事業ではない、と判断しました。

 実は15年からこの事業を売ることは決めていましたが、一方的な形にはしたくなかった。どこまで数字が達成できたらやり、どこまで落ちたら辞めると現地のスタッフと経営陣には話していた。彼らが納得できるための猶予期間が必要だった。時間はかかりましたが、今期中に売却を予定しています。

――キリンビバレッジについてはどのように立て直したのですか。

 カルチャーを変える必要があった。つまり箱数(の売上高)至上主義からの脱却です。一時期は、箱数が利益に直結していましたが、そうではなくなっていた。でも「大型ペットボトルを安く大量に販売して、その部門では赤字などということは通用しない」と言っても最初は現場から理解を得られませんでした。