「個人」として起業家と向き合う投資家が必要

――自らファンドを立ち上げるだけでなく、新しいパートナーとともにファンドを作っていますね。

和田 自社でファンドを立ち上げるのに加えて、2018年には若手ファンドへの投資に特化したファンド「IF LP」を組成しました。ここで進めているのは、いわゆる「ファンド・オブ・ファンズ(FoF)」。ファンド資金の一部を若手VCに任せて、パートナーファンドとして運用してもらう手法です。これまで19のパートナーファンドに出資してきました。これまでのファンド規模は、フラッグシップファンドとよぶ自社のファンドが6号までで総額340億円、パートナーファンドが総額115億円になります。

村田 自社のファンドのみで資金を運用せずにパートナーファンドに出資しているのは、自分たちと同じような個人を主体とする独立系VCを増やすためです。赤浦は昔から、日本のVC業界で活躍する個人が少ないことを懸念していました。日本のVCは証券の子会社としてスタートすることがほとんどだったで、投資の主体となるのはあくまで「会社」です。しかし、これは世界では一般的ではありません。

 米国・シリコンバレーをはじめとした海外では、個人の投資家がパートナーとなって投資の意思決定をしています。サラリーマンが割り当てられたお金を運用する日本の投資スタイルでは、アイデアひとつを武器に少ない仲間とともに市場に乗り出す起業家の目線にはなかなか立てません。投資家も個人としてリスクを背負いながら意思決定をすることで、初めて起業家と対等に向き合うことができると考えています。

――赤浦さんが和田さんや本間さんに出資したのも、個人で活動するキャピタリストを増やすためだったということですか。

村田 赤浦は、米国のドットコム・バブル(注:1990年代から2000年代前半の米国で起きたインターネット業界のバブル)を代表するインキュベーション企業のアイディアラボも参考にしていました。彼らは自分たちで事業アイデアを考え、そこからたくさんのスタートアップを立ち上げるという、現在のスタートアップスタジオに近い方式を採用していました。

 ただ会社のお金を運用するのではなく、VCも自ら個人として事業内容を考える。この根底にあるのも、日本の投資家が個人としてパートナーを務めるべきだという思想です。

 そもそも日本にはパートナー以前に、VCが少なすぎます。日本とシリコンバレーの差異を決定づけているのは、VCの数ではないでしょうか。私たちがFoFに積極的なのは、「パートナーを1人増やせば起業家が20~30人増える」と考えているからです。