出迎えたのはボヘミアに遠征している選帝侯フリードリヒ5世の弟、ハインリッヒ王子で、これから巻を追うごとにイサックとハインリッヒ王子は行動を共にしていくことになる。この王子は架空の人物である。

 私はすぐに「三十年戦争」を検索して経過も結末も調べてしまった。スペイン軍を率いるのはイタリア人の将軍、アンブロジオ・スピノラで、この実在の軍人の履歴も軍歴もわかっている。次々に選帝侯領の都市を占領し、打ち負かしていった軍人なのだ。

 イサックがハインリッヒ王子とともに守っている城が、ついにスピノラのスペイン軍に攻撃される。統制のとれた大軍で、スピノラの指示で機敏に動いている。

 イサックはスピノラ本人が接近するのを待ち、数百メートルの遠距離から火縄銃の引き金をひく。そして、なんと一撃でスピノラ将軍を倒してしまう。統制のとれた軍隊は統率するリーダーがいなくなると動けなくなる。スピノラが射殺された瞬間に大軍は撤退することになった。

 あれれれ! かの有名なスピノラ将軍が開幕と同時に死んでしまった! この物語は完全なフィクションだったのか!

 いや、そうではない。作者は巧妙に史実に戻し、架空の人物を織り交ぜながら、この宗教戦争を精密に描いていくのである。

 DOUBLE-Sの描画はじつに美しく、大軍も細密に描かれていてあきさせない。火縄銃の美しさも格別で、着火して発砲するまでの経過もよくわかるように描かれている。人物の造形もきれいだ。イサックも日本人らしく描かれ、西洋人とはまったく違う容姿である。

 第6巻ではスペイン軍に占領されたプファルツから逃れ、ドイツ北東部へ向かうが、スラヴの騎兵隊に襲われる場面で終わる。この意外な軍勢はハプスブルク支配下のハンガリーからやってきたのだろうか。早く第7巻を読みたいぞ!

(ダイヤモンド社論説委員 坪井賢一)