近年、多くの企業が「プレゼン研修」の導入を進めている。実はプレゼンを学ぶことは、ただ単に社員のプレゼン能力を向上させるだけではなく、思考やビジネスに対する意識をも変え、ひいては会社全体の生産性アップにもつながるからだ。『社内プレゼンの資料作成術』『プレゼン資料のデザイン図鑑』などの著者として知られる前田鎌利氏が「プレゼン研修」を実施したサントリーホールディングス株式会社もそのひとつ。同社が展開する社員の自発性を最大限にいかす「学びのプラットフォーム」と、前田氏による同社のプレゼン資料のブラッシュアップをリポートする。(ライター:小嶋優子)
自発性を最大限に生かす研修プログラム
サントリーは新浪剛史氏が社長に就任した翌年の2015年に「サントリー大学」を創設。サントリーの創業の精神を伝えるプログラムや人材育成プログラム、研修制度を集約、展開し社員各自の成長に応じた手厚い学びの機会を提供している。
「サントリー大学の願いは、社員一人ひとりが自ら学ぶ意識をもって、常に自らを高めていくこと。学びを毎日の仕事の中で発揮していくこと。個人の成長をサントリーという企業の成長につなげていくこと。
そして、キャリアオーナーとして自分のキャリアを主体的に描き、そこに向かって責任をもって前向きに努力してほしい。そのための施策をすべて『サントリー大学』を通じて提供しています」とサントリーホールディングス株式会社の服部亜起彦さんは話す。
「サントリー大学」では、リーダーシップとキャリア開発・創業の精神の共有と実践・ONE SUNTORYの推進を大きな三つの柱として、さまざまなプログラムが用意されており、国内で7000人(国内・海外グループ会社を除く)を超える社員が積極的に「学び」の機会を得ている。
そのなかで、本稿で注目したいのが、2017年に始まった社内の学びのプラットフォーム「寺子屋」だ。これは、サントリー食品インターナショナル株式会社でスモールスタートしたうえで、翌2018年にサントリーホールディングス全体に広げたもの。
一人ひとりの社員が自由に「学びたいこと」や「共有したいこと」を寺子屋サイト内で発信し、社員自らが講師として登壇したり、社外から講師を呼んできて「研修プログラム」や「イベント」を立ち上げることができる仕組みだ。まさに、社員の自発性を最大限に生かす取り組みと言えるだろう。
「寺子屋」事務局のひとり、サントリー食品インターナショナル株式会社の長谷川菜緒さんは、次のように話す。
「寺子屋は、<学ぶ><繋がる><教え合う>をコンセプトに、社員が自由にイベントを立ち上げ、スキルをシェアしたり興味のあることを共有して、社員間の交流を図ったり知見を広げるための、社員主体のカジュアルな学びの場です。サイトにはすでに1万人以上が登録されており、盛り上がりを見せ始めています」
『社内プレゼンの資料作成術』『プレゼン資料のデザイン図鑑』の著者・前田鎌利さんによるプレゼン研修も、この「寺子屋」を通して実現したという。
「ある社員が、前田さんのプレゼンを学びたいと提案。社内プレゼン、社外プレゼンを問わず、同じ悩みをもつ社員からも次々に手が挙がったので、寺子屋事務局から前田さんに研修をお願いしたのです」(長谷川さん)
そして、2018年8月20日にプレゼン研修を実施。オンラインでの参加もあわせ、全国の社員約100名が参加したという。「参加者全員が『プレゼンを学びたい』という意欲にあふれていますから、非常に充実した研修になりました」と講師を務めた前田さん。実際、研修後、参加者が自分のプレゼン資料を改善するケースがあちこちで見られるという。自発性を最大限に生かす「寺子屋」の強みが発揮されたと言えるだろう。