持株会社をつくって、親会社の株を買い取る

 2007年に、日本レーザーは、「MBO」でも「M&A」でも「IPO」でもなく、「MEBO」(マネジメント・アンド・エンプロイー・バイアウト)によって、日本電子からの独立を果たしました。

 支配株主の日本電子から独立すれば、人事や事業展開上の制約がなくなり、機動的な経営が実現できます。

・MEBO……経営陣だけでなく、社員も一緒になって親会社から株式を買い取る手法
 マネジメント……経営陣
 エンプロイー……従業員
 バイアウト………買収

 MEBOを選択したのは、経営者だけではなく社員も株主になり、「自分たちの会社」という意識を高めてほしかったからです。

 メインバンクとしても、「持株会社設立によるMEBO」は、メリットがありました。日本レーザーが独立すれば、社債発行や、為替予約(親会社のしがらみがないので金額や期間の自由度が高い)が新たに発生するからです。

●日本レーザーが考えたMEBOのスキーム

1.「JLCホールディングス」という持株会社(特定目的会社)を設立
2.「JLCホールディングス」が、日本電子から日本レーザーの株式を買い取る
3.社員(社長の私も含む)から「JLCホールディングス」に出資を募って、集まった出資金(自己資金5000万円)と、銀行からの長期借入金でまかなう(投資ファンドなどは入れない)※具体的な流れは本書で詳述

 最大の問題は、日本電子からの「株式の買取価格」(日本電子からいくらで買い取るか)でした。

 日本電子が独自に格付機関に100万円の手数料を支払ってデュー・デリジェンス(資産価値を適正に評価してもらうこと)をしてもらったところ、簿価純資産やキャッシュフローに着目した方式で株価を評価すると、15〜20倍の企業価値だと算出されました。

 これではとても買い取れません。

 そこで私は、2倍の200万円を払って別の格付機関に依頼し、「3〜6倍の企業価値である」というレポートをつくってもらうようにお願いしました。

 理屈はこうです。

「レーザー専門の輸入商社は常にリスクと隣り合わせである。
 海外メーカーに契約を打ち切られると、すぐにP/Lがガタガタになる。
 簿価純資産がどれだけあっても、決して安泰ではない。
 こうしたリスクを踏まえると、簿価純資産より買取価格が低くてもおかしくない」

 そして、大株主の日本電子に対しては「6倍」での買取とし、個人株主に対しては簿価純資産ではなく配当金に着目した方式で算出し直して「3倍」としました。

 理由は、個人の少数株主は、配当期待株主なので、配当率10%ならば「1倍」でいいという規定を適用しました。

 当時の配当率が30%だったので、3倍になったわけです。

 こうして同じ株を「親会社からは6倍、個人株主からは3倍」という買取可能な価格に設定することができたのです。

 私が前会長・前社長から300万円で買った株は、900万円になりました。

 損を覚悟のうえで買った株でしたが、結果的には「儲かった」ことになります。

独立後の株主構成
・日本電子の持ち分……14.9%
・私(近藤)の持ち分……14.9%

・他の経営陣の持ち分……38.2%
・社員の持ち分……32.0%

 今に至るまで、社外のファンドを一切入れずに、経営陣と社員全員だけで株式を買い取る「MEBO」で独立を実現し、その後の新入社員やパート出身者、派遣出身者も全員株主になっている会社は聞いたことがありません。

 日本で唯一の会社と言っていいでしょう。

 このスキームは、「モチベーションの高い社員たち」だったからこそ可能だったと非常に誇りに思っています。
 
 会社を「黒字」に変えたいのなら、

「脱子会社も脱赤字も、それを実現するのは社員である」

 という当たり前の事実を見つめ直すことから始めるべきだと思います。

 新入社員や、パート・派遣からフルタイムや正社員になった社員が全員株主になっていることが、日本では例のないユニークなモデルといわれている。

 こうして、普通のサラリーマンだった私が、幾多の修羅場を経験し、ご縁にも恵まれ、63歳にして創業経営者になったのです。
 ただし、経営する企業の社員全員が株主という、世にも稀な資本政策の結果です。
 しかし、だからこそ、修羅場はまだまだこの先も続くことになるのです。

MEBOの詳細については、本書をご覧いただければと思います。

ps.「25の修羅場」の詳細は、第1回連載「倒産寸前から売上3倍、自己資本比率10倍、純資産28倍!「25の修羅場」が「25年連続黒字」をつくった理由」をご覧ください。きっと、私が血反吐を吐きながら、泥水を飲みながらのここまでのプロセスの一端を垣間見れるかと思います。