世の中には、生涯で本を5冊も読まない人が大勢います。
「購入された書籍全体の95%が読了されていない」のです。
 でも、途中まで読もうとしただけでも、まだマシです。
「購入された書籍全体の70%は、一度も開かれることがない」のですから。
「最初から最後まで頑張って読む」「途中であきらめない」
 こんな漠然とした考え方は、今すぐ捨ててしまって結構です。
 これから紹介する1冊読み切る読書術さえ身につければ!

3分の細切れ時間で1冊読める

外出するときは本を持つ

明治大学文学部教授・齋藤孝氏齋藤 孝(さいとう・たかし)
1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学大学院教育学研究科博士課程を経て、明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。ベストセラー著作家、文化人として多くのメディアに登場。著書に『声に出して読みたい日本語』(草思社文庫、毎日出版文化賞特別賞受賞)、『身体感覚を取り戻す』(NHKブックス、新潮学芸賞受賞)、『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)、『大人の語彙力ノート』(SBクリエイティブ)など多数。<写真:読売新聞/アフロ>

 私は突然、大学の教え子たちに「本を1冊出して隣の人に紹介してみてください」と言うことがあります。
 すると「えっ!? 今は持ってませんけど」と言う学生がいます。
 そういう学生には、こう諭します。

「いいですか。学生にとっての本というのは、武士にとっての刀と一緒ですよ。『すみません、刀忘れちゃいました』なんて武士はいませんよね? 武士が丸腰で外を歩いたら、斬られても文句は言えませんよ」

 こんなふうに言うと、学生たちは真面目で素直なので、次の日からちゃんと本を携行するようになります。

 また、英米文学を専攻する学生には、こうもアドバイスします。

「電車では英語の本を読みなさい。まだ読んでいない本でも、真ん中くらいのページから開いて、読み込んでいる雰囲気を出しなさい。見る人が見れば『若いのに英語の原書を読んでいるなんてすごいな』と感心するはずです。御茶ノ水の駅で降りたら『きっと明治大学の学生だな』となって、大学のブランドイメージ向上にもつながりますよ」

 いずれにしても本を持たずに外出したら、降水確率100%の日に傘を忘れたような痛恨事と受け止めるようにしましょう。

 せっかくスキマ時間を見つけても、そのときに本がなければ読めないのです。

 ある小学生は、学校が忙しくて通学の電車ぐらいでしか読書ができないそうです。
 それでもランドセルに本を常備して、2日に1冊は読んでおり、近ごろでは両親がわが子と議論してもまったくかなわなくなったそうなのです。

 大人の読書の励みになりそうな話ですよね。