世の中には、生涯で本を5冊も読まない人が大勢います。
「購入された書籍全体の95%が読了されていない」のです。
 でも、途中まで読もうとしただけでも、まだマシです。
「購入された書籍全体の70%は、一度も開かれることがない」のですから。
「最初から最後まで頑張って読む」「途中であきらめない」
 こんな漠然とした考え方は、今すぐ捨ててしまって結構です。
 これから紹介する1冊読み切る読書術さえ身につければ!

音楽でスイッチを入れる

明治大学文学部教授・齋藤孝氏齋藤 孝(さいとう・たかし)
1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学大学院教育学研究科博士課程を経て、明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。ベストセラー著作家、文化人として多くのメディアに登場。著書に『声に出して読みたい日本語』(草思社文庫、毎日出版文化賞特別賞受賞)、『身体感覚を取り戻す』(NHKブックス、新潮学芸賞受賞)、『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)、『大人の語彙力ノート』(SBクリエイティブ)など多数。<写真:読売新聞/アフロ>

 スキマ時間の読書モードにスイッチを入れてくれるのが、音楽です。
 本と音楽の相性は抜群なのです。

 音楽を聴きながら本を読むのは、私にとって至福の時です。
 そこがカフェだったりすれば、もう最高。
 本とコーヒーと音楽、なんと豊かで文化的な取り合わせでしょうか。
 考えるだけでも幸せな気分になります。

 私はソニーの携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」を常に携行していて、いつでも音楽を聴けるようにしています。
 スマホではなく、なぜウォークマンかというと、「音楽を持ち歩く」というコンセプトを実現したソニー創業者・盛田昭夫さんと井深大さんをリスペクトしているからです。

 私が愛用するウォークマンには、わざわざCD数百枚からダウンロードした数千曲が入っています。
 馴染みの薄い曲からヘビーローテーションの曲まで、その日の気分に合わせて選び、読書しながら流れてくる音楽を楽しんでいます。

 あくまでもメインは読書で、音楽はサブの位置づけです。
 音楽は聴いているけれど、意識は読書に向けます。
 すると、本を読んだときの喜怒哀楽に音楽が色を与えてくれます。
 本に相応しい情緒を音楽が醸し出してくれるのです。

「音楽は時間の芸術」とも言われますが、いったん再生すると常に進んでいきます。
 これに文章を追う目線がけん引されます。
 音楽が思考に推進力とリズムを与えてくれます。

 要するに音楽を聴くと読書が進むということです。

 音楽と本の種類には相性があります。
 イタリアの絵画集とビバルディのクラシック、スペイン文学とフラメンコギター、変わったところではドストエフスキーと藤圭子(宇多田ヒカルさんのお母様ですね)の演歌というのも、実に重々しい作品同士でしっくりきます。

 音楽を聴けない環境の場合、私は周囲の人の話し声をBGMにしてしまいます。
 適度なざわつきが絶妙なリズムとなって、本に集中しやすくなるのです。