彼らの本音は、自分たちは正しいのに、世間の現実が間違っているということだろう。

 こうした研究がおかしいとは思わない。学者というのはどこか浮世離れしているもので、そこに存在意義があるともいえるからだ。

曖昧な政府債務の定義
「財政破綻本」の警鐘当たらず

 ただし、この研究会の危機感は、債務残高対GDP比が発散すると考えているようだ。

 日本の数字をいえば、「借金1000兆円でGDP500兆円の200%」というのが財務省の常套句だが、いつも疑問に思うのは、どうして資産を引いてネットで考えないのだろうか、ということだ。

 政府単体だけでも資産を相殺したネットで考えれば、対GDP比100%にはならない。ちなみにネットでアメリカと比較すれば、日本のほうが低い。

 政府単体ではなく、政府子会社(日銀は政府子会社である)も含めた連結ベースで見たらどうか。

 ブランシャール氏のように「統合政府」というのでもいい。

 その上でネットで見ると、債務は0%に近い。こうなると、先進国の中でトップクラスの出来である。

 研究会で勉強をするのは結構なことだが、そもそも議論のスタートである「財政破綻があるはず」という認識がかなり怪しかったのだろう。

 結局、研究会自体も今から4年半前の2014年10月3日の22回で終わり、現在は休止になっているようだ。

 こうした議論の根本的な問題は、日本の財政状況をしっかりと数量的に把握していなかったことだ。

 財政破綻というのは、債務残高対GDP比率が発散するということだとは認識していたと思うが、この場合の債務残高について、グロスなのか、ネットなのかさえ明確でない。

 筆者にはなんとなくグロスと思い込んでいるように思える。

 参加している経済学者は、会計的な知識が乏しく、国のバランスシートさえ頭に浮かばなかったようだ。

 経済学者によるいわゆる「財政破綻本」もかなり出ている。

 例えば『2020年、日本が破綻する日』(2010年8月)、『日本経済「余命3年」』(2010年11月)、『金融緩和で日本は破綻する』(2013年2月)などなどだ。