第3章

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 インターホンが鳴っている。

 森嶋は半分夢の中でその音を聞いていた。今、何時だ。

 ベッドから出ると、部屋の冷気が全身に沁み込んでくる。細胞が収縮し、思わず全身を震わせた。窓を見るとネオンの明かりが霞んでいる。雨が降っているのだ。

 インターホンのディスプレイを見ると、マンションの入り口に、傘もささずコート姿の男が立っている。ロバートだ。

「開いてる。セキュリティは外した」

 午前4時だ。ベッドに入ってからまだ2時間もたっていない。

 昨夜は村津と別れてマンションに帰ったが、殿塚の姿が浮かんで、なかなか寝付けなかった。殿塚の様子からは死を宣告された患者には見えなかったのだ。ダンディないでたち、豪快に笑い、よく飲みよく食べた。そして、道州制への思いを熱く語った。

 考えているとますます目がさえてきた。仕方がないので起き出して、しばらく仕事をしていたのだ。

 ドアを開けると、ロバートが森嶋を押し退けるようにして入って来て、キッチンに直行した。冷蔵庫から缶ビールを取り出した。

「いつも悪いな、こんな時間に」

 缶ビールを一気に飲み干すと、森嶋に向き直って笑みを浮かべた。しかし、その笑みは顔の筋肉を引きつらせているだけだ。

 こんなロバートを見るのは初めてだった。森嶋の知るロバートは、どんな時にも人を引きつける気持ちのいい笑みを浮かべたものだ。だが、目の前のロバートにはそれがない。精一杯平静を装ってはいるが、全身から疲れと焦燥がにじみ出ている。

「何があったんだ」

 ロバートは冷蔵庫からもう1本缶ビールを出したが、一瞬、考えるような素振りを見せてテーブルに置いた。

 椅子を引き寄せて座ると軽く息を吐いて森嶋を見つめた。