ユニバスの設立準備段階で掲げられていた「大学スポーツのビジネス化」というビジョンは、どこへ行ったのでしょうか。

 近々公表されるはずの20億円にも及ぶスポンサーマネーも、あくまで一時的な資金にすぎません。ユニバスは本来、ノウハウやアイデアによって持続的に稼ぐ仕組みをつくり、そこで創出した資金を自分たちでコントロールしながら、大学スポーツの発展に活用しようという組織のはずです。そのビジョンを外してスポンサーマネーをつないでいくだけで、その目的は果たせるのでしょうか。

 さらに、この20億円で何を実現すべきか。退路を絶つ覚悟で真剣に考えている人は、現在のメンバーでどれほどいるのでしょうか。さらには誰が成果に対してコミットしているのか。普通なら“顔”が見えてくるものですが、まったく見えません。

 私は経営者としての経験から、このお金はコストとしてではなく投資に回されなければならないと考えていました。例えば、学業とスポーツの両方で素晴らしい成績を残した選手の学費は全て免除する(制度によってできるものできないものがあるなどの揚げ足取りのような指摘はさておき)。あるいは海外のスポーツチームや大学に留学する費用を援助する。これは人に対する投資です。さらに、チームに対する投資、施設に対する投資、PR活動に対する投資などもあり得るでしょう。普通の組織であれば、すでにそういった計画が公になってなければならないはずです。

日本を変える大学スポーツの可能性

 コストではなく投資という視点によって価値を生み出していくには、経営的視点が必要です。それはリスクを背負う人であり、説明責任を果たせる人であり、ビジョンを示すことができる人です。つまり、ユニバスが日本版NCAAとしての役割を果たそうとするなら、経営的視点を持った人物を集め、決断力のあるリーダーを据え、社会に新しい意義を生み出すために、自由に躍進しようとするベンチャー企業のような経営体にする必要があるということです。

 新しい事業の立ち上げ段階からその業界内の影響力の大きな人々への網羅的配慮があけすけに見えるような組織では、改革は本当に難しいと私は思います。

 大学スポーツをビジネス化し、学生アスリートを育成し、コンテンツとしての質を高め、規模を拡大し、持続性を確保していく──。そのビジョンを失ったユニバスを、日本版NCAAと呼ぶことはもはやできません。しかしながら、私は大学スポーツには日本を変える大きな可能性があると考えます。その一つとして読者の皆さんと共有したいアイデアは「大学のスポーツチームは地方創生を実現するドライバーになり得る」ということです。なぜなら、大学とはまさしく日本全国の地方に根を下ろしている教育機関であり、スポーツは老若男女誰もが楽しめるオブジェクトだからです。

 では、大学スポーツと地方創生の関係とはどうあるべきなのでしょうか。それを次回、詳しく説明したいと思います。

池田 純
早大卒業後、住友商事、博報堂勤務などを経て2007年に株式会社ディー・エヌ・エーに参画。2011年横浜DeNAベイスターズの初代社長に就任。2016年まで5年間社長をつとめ、コミュニティボール化構想、横浜スタジアムのTOBの成立をはじめ様々な改革を主導し、球団は5年間で 単体での売上が52億円から110億円へ倍増し黒字化を実現した。退任後はスポーツ庁参与、明治大学学長特任補佐、日本ラグビーフットボール協会 特任理事などを務め、2019年3月にさいたま市と連携してスポーツ政策を推進する一般社団法人さいたまスポーツコミッションの会長に就任した。また、現在有限会社プラスJでは、世界各国130以上の スタジアム・アリーナを視察してきた経験をもとに「スタジアム・アリーナミシュラン」として、独自の視点で評価・解説を行っている。plus-j.jp/ 著書に『常識の超え方』『最強のスポーツビジネス』(編著)など。