「かわいそうな人」扱いが
他責傾向を増長させる

 その典型的なケースだった可能性が高いのが、川崎の事件を起こした岩崎隆一容疑者だ。

 今年1月、引きこもり傾向を相談していた市職員からアドバイスを受けて、おじが手紙を書いた。手紙の中で自分のことを「引きこもり」と書かれていることに対して、岩崎容疑者はカチンときたようで、「自分のことはちゃんとやっている。食事も洗濯も自分でやっているのに、引きこもりとは何だ」と怒ったという。

 もちろん、引きこもりの人はすべてプライドが高いなどと言うつもりは毛頭ない。受け取った手紙に「引きこもり」という文言があっても、なんとも思わないという方もいらっしゃるだろう。しかし、9割の人が「他人に干渉されたくない」と思っているのも事実だ。

 そういう人たちに、「自立支援」という、かなり一方的で押しつけがましい「干渉」をしても、反感を買うだけというのは容易に想像できよう。

 また、「自立支援」というスタンスの最大の問題なのは、(3)の《腫れ物扱いが「被害者意識」を増長させる》ということだ。

「支える」「助ける」という「上から目線」の扱いがまずいのは、引きこもりの人たちに「自分は社会からサポートされるようなかわいそうな立場の人間なのだ」と錯覚させてしまうことにある。そういう被害者意識を植え付けられた人は往々にして、周囲を困らせるパターンがよくあるのだ。

 10年くらい前、世間を震撼させた猟奇事件を起こして服役していた人物と親交があった。当時で50代後半だったが仕事はなく、大企業の役員をしていた父の家で暮らし、その父が亡くなった後も、父の残した資産で食べ繋いでいた。今でいう「中高年引きこもり」だ。

 最初は普通に友人付き合いをしていたが、何かにつけて社会が悪いとか、自分のことを評価しない、誰それが悪いという愚痴っぽい話が多いので、次第に距離を取るようになっていった。すると、ある日、携帯電話にこんな留守電が入っていた。

「そんなに僕に冷たくするのなら、これから包丁を持って渋谷のスクランブル交差点に行って誰かを刺します。捕まったら、友人から避けられて人生が嫌になったと言ってやりますよ」

 私は速攻で自宅に伺って、話相手になってご機嫌取りをする羽目になった。なにせ相手は一度、人を殺した経験がある人物なのだ。