段ボール箱などの散乱するゴミ屋敷のような家に1人で暮らす、60歳の男性がいる。彼を追い詰めるものの正体とは

段ボールが散乱するゴミ屋敷で
1人静かに暮らす60代男性の素顔

 住宅街にある2階建ての家の玄関を開けると、目の前に段ボール箱などの散乱するゴミ屋敷のような風景が広がっている。家の中を清掃したくても、足に痛みを感じて、片づけることができないのだ。

 都内在住のAさん(60歳)は、父親と母親を亡くした後、そんな両親の残してくれた家に、今は1人で暮らしている。

 足の痛みで階段を上り下りするのも不自由なAさんは、2階の部屋を埋め尽くすアンティークなオーディオ機器や家具、レコードなどの山に囲まれて、最近は敷きっぱなしの布団の上で寝たきりのような状態になった。

 高齢の親が収入のない子の生活を支える「8050問題」の背景には、同居している親子が家族ごと孤立していて、身動きが取れなくなっている現実がある。そんな当事者たちが心配しているのは、親に万一のことがあったとき、残される子はどう生きていけばいいのかという問題である。

 Aさんの両親は、ともに公務員だった。唯一の兄弟である弟も公務員で、兄弟仲が悪いこともあって別居している。親の遺産をそれぞれ相続した形だ。

「4人家族のうち、公務員でないのは僕だけです。父からは“役人が一番いい”と散々言われました」(Aさん)

 小学校は母親が勤める学校だった。クラス替えになるたびに、Aさんの担任になる教師の職員室の机は、なぜかいつも母親の机の向かい側だった。

「何も隠し事ができなくて……。いつもいい子でいなければいけないし、他の親からも疎まれた。今の自分が引きこもりになるルーツの1つだったのではと感じてます」

 振り返ってみれば、自分自身が変わった反応をしてしまうため、クラスメートと話せなくなり、小学校の頃から移動中に後ろを蹴られたり、モノを隠されたりして、陰でいじめられた。人を信用することもできなくなっていた。

 Aさんは人間関係で人と衝突するのが嫌で、「お人よし」と言われた。母親は常に「この子は、社会適応ができないのではないか」と心配していた。Aさんも、本当は皆と仲良く楽しく過ごしたいのに、自分を保つために壁をつくった。