グーグルで最速仕事術「スプリント(デザインスプリント)」を生み出し、世界の企業の働き方に革命を起こしてきた著者が、今度は、時間を最大限に有効に使うメソッドを生み出した。それをまとめたのが『時間術大全――人生が本当に変わる「87の時間ワザ」』(ジェイク・ナップ、ジョン・ゼラツキー著、櫻井祐子訳、ダイヤモンド社)だ。同書はたちまちのうちに話題となり、世界16ヶ国で刊行が決まっている。
著者のジェイク・ナップはグーグルで、ジョン・ゼラツキーはユーチューブで、人の目を「1分、1秒」でも多く引きつける仕組みを研究し続けてきた「依存のプロ」だ。そんな人間心理のメカニズムを知り尽くした2人だからこそ、同書の時間術はユニークかつ、きわめて本質を突いている。「人間の『意志力』などほとんど役に立たない」という、徹底して冷めた現実的な視点からすべてが組み立てられているのだ。
さらに、「いくら生産性を上げても、ひたすら他人の期待に応えているだけ」で、自分のためになっているわけではないという。
そんな本書において、時間を有効に使いたい人が気をつけるべきものとして、ツイッターをはじめとするSNSがあげられている。ツイッターなんて息抜き程度で隙間時間に見ているだけで、たいして時間を使っていない、と思っている人も多いだろう。しかし実際には、そんな何げない行動も大きなロスを生んでいる。そしてそのようなワナは至るところに潜んでいるという。同書より一部を紹介したい。
「見せかけの達成感」に騙される
ツイートを共有する、フェイスブックを更新する、インスタグラムに写真を載せるといった行動は「時間クレーター」の元凶だ(「時間クレーター」とは、一瞬の時間を使うだけと思ってすることが起こす大きな時間のロスのこと。たとえば、数秒しか要しないつもりでツイッターでつぶやいても、そこからほかのツイートを見たり、しばらく自分のツイートへの反応を気にしたりして、結果的に30分以上の大きな時間ロスにつながることになる。『時間術大全』参照)。
だが、それらが危険な理由がもう1つある。そうしたことをすると、「見せかけの達成感」を得られるのだ。
ネット上のやりとりにコメントすると、何かをやり遂げたような気になり、「仕事をしたぞ!」と脳が知らせてくる。
だがネット上のコメントは、100個のうち99個までが取るに足りないものだし、それなりの代償を伴う。つまり、本当にやるべきことに費やしていたはずの時間と労力が奪われるのだ。見せかけの達成感は、やるべきことに集中する妨げになる。
見せかけの達成感には、ほかにもいろいろなものがある。
スプレッドシートの更新が、難しいがやりがいのあるタスクをあとまわしにする口実になるなら、それは見せかけの達成感をもたらしている。キッチンの片づけが、子どもとすごすはずの時間に食い込んでいるなら、それも見せかけの達成感だ。そしてメールの受信箱には、見せかけの達成感のもとが無限につまっている。
メールをチェックすると、何も新しいことをしていないのに、何かを達成したような気分になる。「よし」と脳は言う。「状況を把握できたぞ!」
集中すべき時間が来たら、自分に言い聞かせよう。本当にやりたいことや、やるべきことをやることこそが「本物の充実感」を与えてくれるのだと。
(本原稿は、『時間術大全――人生が本当に変わる「87の時間ワザ」』〈ジェイク・ナップ、ジョン・ゼラツキー著、櫻井祐子訳、ダイヤモンド社〉からの抜粋です)