約40年前に発明され、20億人が触れたというマインドマップ。 コンピュータで使うためのソフトウェアの開発が試みられてきたが、手がきに匹敵する使用感のものはなかなか生まれなかった。初めての公認ソフトiMindMapの開発者で『ザ・マインドマップ[ビジネス編]』の共著者でもあるクリス・グリフィス氏に、開発プロセスと将来ビジョンを聞いた。

起業家の夢を実現させたマインドマップ

――マインドマップとの出会いは? どのように使ってきたのか?

 私は早い時期に学校教育から離れ、16歳で起業した。事業を成功させるには、人よりよく考え、人とは違うアイディアを生みださなければ、とたくさん本を読んでいた。短時間で多くの本を読むために買ったのがトニー・ブザンの速読術の本で、そこに収載されたマインドマップを見て自分もかきはじめた。

 人間の記憶は24時間で80%消えてしまう。本を読むときに章ごとにマインドマップに内容をまとめておくと、後日、マインドマップを2分間見ただけで、本の全容を思い出すことができた。もう一度最初から読み直すのと同じ効果があったのだ。

 これは私の事業の成長に大きな力となった。例えば、交渉術の本を何冊か読んでマインドマップにしておき、ビジネス相手との交渉前日に見返すと要点がすべて頭に入るので非常にスムーズに話を進められた。また、マインドマップをかくと明確かつオープンに考えることができ、独自の戦略を短時間のうちに立案、実行できたと思う。マインドマップは生産性を向上させると同時に、全体像をビジュアルで把握できるので直線的思考からは得られない、ビジネスに対する直観を与えてくれる。

 こうして起業から10年ほどでロンドンはじめパリ、フランクフルト、ローマ、ワシントンなどに事務所を持つほどになり、売却して次の起業へ向かった。以来、いくつかの企業の創設に関わり、今はトニー・ブザンの後を継いでThinkBuzanのCEOを務めている。

 実は20歳ぐらいのころにかいたマインドマップに自分の目標として、「トニー・ブザンと仕事をする」と書いていた。まさにそれが実現したわけだ。