ここでは、C社のリーダー陣が最も議論することが難しかったと話す「(自分も含めた)会議の参加メンバーから取締役を選出する」という会議で、メンバーの視点・視野・視座が一気に引き上がった事例を紹介しよう。

 通常ではあり得ない役員人事を、会議参加者全員で決めるという非常識と思える方法を選択したC社の意図、本質とはなんだったのだろうか?

[会議の参加メンバーから取締役を選出する弁証法的会議]

 会議は普段とは少し異なり、重い沈黙と並々ならぬ緊張した空気からスタートした。参加者は全員かなり成長意欲が高く、自分視点で考えれば、当然自分が取締役になってもおかしくないと考えているメンバーがそろっている。

 5時間に及ぶ白熱した「弁証法的会議」で議論を尽くした結果、最終的に参加者全員が納得した上で、新たな取締役としてFさんが選出され、皆が晴れやかな気持ちで会議を終えた。

 皆が候補者であり、選出者であるという状況。自らを推薦したくなる気持ちもある。それでも最終的な結論に皆が納得できるのは、参加したメンバーがそれぞれ相手や自分のことをきちんと捉え、全体視点でものごとを判断する力を持っているからだ。

 もちろん、最初から身についているメンバーばかりではないが、「弁証法的会議」を繰り返すことで、参加者も成長していくのである。

 この「会議の参加メンバーから取締役を選出する」会議も、参加者が経営者の立場からものを見る絶好の機会となった。実際に会議に参加した、Nさん、Oさんの声、また議題を提示した社長の声を見ると、得られたものの大きさがわかる。

【会議に参加したNさんの声】

 正直にいうと「自分も(取締役に)なりたかった」という気持ちはあります。やはり大きな意思決定の責任や権限を背負えばそれだけ経験を積めるので、自分の成長もさらに加速しますから。

 途中Mさんが自分を推薦してくれた時には、すごくうれしかったし、もう喉元まで「自分が取締役やります!」という声が出かかっていました。ただ、自分を客観的に見たときに、Fさんに比べたら会社のビジョンに対する思いや、そこからくる日々のコミットメントが弱いと感じる部分がありました。それがある限り、全体視点で考えたら自分が役職をもらうのは今ではないだろうと感じました。

 悔しい気持ちも残っていますが、会議で出した結論には100%納得しています。この会議を通して自分のこの気持ちに気づけたことは大きな収穫で、次回の同様の会議では自信を持って立候補できるように日々精進したいと思っています。