金融庁としては、世論を一定程度味方に付けた一方で、政権与党を敵に回し、不興を買ってしまったのは紛れもない事実だ。

「正論を言うにしても、言い方とタイミングがあるんじゃないですかね」

 そう言いながらほくそ笑むのは、公正取引委員会の幹部だ。

 政権与党と金融庁との間に亀裂が生じていることを、いい気味だと見ているわけだが、なぜ金融庁にそこまでの敵意を抱くのか。

 最大の理由は、公取委にとって政治とのパイプが細いことが常に悩みの種であり、その弱みに付け込まれるようなかたちで、金融庁との綱引きにこれまで負け続けてきたからだ。

 中でも痛手だったのが、長崎県の地方銀行の合併問題だ。同一県内での銀行合併に対し、市場の独占を懸念する公取委と、地方経済の疲弊を踏まえて合併を促したい金融庁との間で、主張が激しく対立。事態打開に向けて、金融庁が首相官邸に駆け込んだことで、議論の流れが金融庁側に傾いていったという経緯がある。

 さらに、金融庁は昨夏、成長戦略を議論する「未来投資会議」(議長・安倍晋三首相)で、こと銀行の経営統合に関しては、独占禁止法の適用を受けないようにすることを提案したのだ。

「競争を実質的に制限するような企業結合(合併)について、公正取引委員会が排除措置命令をすることは、国際標準に合致した制度であって、そうした制度を日本だけ変えるべきという議論になるとは夢にも思っていない」

 公取委の杉本和行委員長は、記者会見でそう気色ばんでみせたが、議論の流れを変えることはできなかった。