世界的に多大な影響を与え、数千年に渡って今なお読み継がれている古典的名著たち。そこには、現代の悩みや疑問にも通ずる、普遍的な答えが記されています。しかし、そのような本はとんでもなく難解で、一冊しっかりと理解するには何年もかかるものもあります。本連載では『読破できない難解な本がわかる本』(富増章成著)から、それらの難解な名著のエッセンスを極めてわかりやすくお伝えしていきます。(イラスト:大野文彰)

生活を豊かにする方法とは?

 アダム・スミスは、重商主義を批判しました。これは16世紀末から18世紀にかけてヨーロッパの国々を支配した経済思想です。

 重商主義では、富を代表するものは金銀または「財宝」でした。これは金銀貨幣を最大に重視し、これらの増大を重視する経済政策です。「利潤を獲得すること=貨幣を増やすこと」なので、商品を安く仕入れて高く売ることで、売買の差額から貨幣が生じます。よって、利殖という点からすると、農業や工業よりも商業のほうが優位に立つと唱えられていました。

 これを獲得する唯一の手段は海外貿易しかありません。よって、富の獲得される場所は海外市場ということになります。国家は自国の生産物を海外に輸出し、海外からの輸入をできるだけ抑制し、その貿易差額を金・銀で受け取って貯め込みます。

 それには低コスト・低価格で商品を輸出しなければいけないので、労働者の賃金は低く抑えられ、長時間労働になります。

 これについて、アダム・スミスは異をとなえます。富は特権階級(金銀を重視する階級)ではなく、諸階層の人々にとっての「生活の必需品と便益品」を増すことであるというのです。つまり、自国の労働により、生産力が高くなればそれだけ富の量は増大することになります。さらに、スミスの『国富論』では、重商主義の批判から、自由放任の思想が展開されます。