中央銀行の仕事は、かつて金融をつかさどる聖職で政治を超越したものだとされていた。もはやそうではないことを欧州のリーダーたちは示した。欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁の後任にクリスティーヌ・ラガルド氏を指名したのだ。フランスの元財務相で2011年から国際通貨基金(IMF)の専務理事を務めるラガルド氏の専門は、金融というより財政だ。しかし、ECBは何年も前から欧州の経済政策を動かす唯一の当局になっているため、政治家が総裁に就任するのは適切なのだろう。ラガルド氏が受け継ぐ組織と通貨圏は岐路にある。ドラギ氏は2012年、ユーロ存続のために必要な手を尽くすと言明した。素晴らしい政治手腕を発揮して慎重な各国リーダーを説得し、マイナス金利や資産購入(量的緩和=QE)といった新手の政策を受け入れさせたが、それは欧州に実務・政治面の課題をもたらした。