総額1兆円を投じた
巨額買収の財務インパクト

 ルネサスは元来、ハードウエアの制御を行う「マイコン」を得意としてきた。車でいえば、「走る・曲がる・止まる」をコントロールする半導体だ。ただ、IoT(モノのインターネット)や先進運転支援システム(ADAS)の普及が現実的となった今、アナログ半導体の品ぞろえ強化は絶対だった。

 IoTやADASは、センサーの数を増やし、いかに外の情報を取り込んで人工知能(AI)といった高次元の「脳」に適切な判断をさせるかが要となるからだ。

 アナログ半導体は、センサーが取得した外の情報を信号に変換して脳に伝達したり、脳が下した結果を「筋肉」に伝達したりする「神経」の役割を担っている。つまり、センサーの数に応じてアナログ半導体の需要増も期待できる。

 しかも、アナログ半導体は技術者による“匠の技”が必要であるため、高収益だ。利益率の高い世界のライバルと伍して戦うには、買収による製品ポートフォリオの改革は必須だった(図4)。

 インターシルとIDTは、どちらもルネサスの主力の自動車分野には弱いが、「車にも耐え得る高性能な製品を持っている」(加藤寛和・ルネサスIR課長)。ルネサスの顧客基盤と2社の技術力の合わせ技で製品を売り込む他、アナログ半導体とマイコンを最適に組み合わせた“セット売り”でも市場を取り込んでいく考えだ。

 ただ、ルネサスの財務はこれからますます厳しくなる。巨額買収による資産の償却が重くのしかかるからだ。ルネサスが採用する国際会計基準(IFRS)ではのれんの償却はせずに済むが、のれん以外の資産の償却からは免れない。

 19年1~3月期に計上した買収に伴う資産の償却費39億円には、実はインターシルの償却分しか入っていない。今後は3月に買収が完了したIDTの償却分も加わり、さらに利益が押し下げられることになる。ルネサスには、しばらく正念場が続きそうだ。