ルネサス社長電撃解任、INCJが2度目の人事介入で引導_ルネサスの自動車用半導体事業をけん引した大村隆司氏ルネサスの自動車用半導体事業を牽引した大村隆司氏。ルネサスの要職を外されて、ソニーに転じた Photo by R.M.

 これに加え、経産省の元には、取引先の自動車メーカーから呉氏の経営手腕を疑問視する声が届いていた。「利益重視を追求するあまり、工場の製品の生産停止を急いだかと思えば、駆け込み需要が増えるとそれを撤回するなど生産が安定しない」――。そうしたクレームを受けて経産省は、冒頭のルネサス関係者のヒアリングを本格化させていたのだった。

 また、呉氏への不信は内部からも噴出していた。同氏は16年の就任直後にかつての部下だった山並裕尚氏を人事担当の役員に呼び寄せたのをきっかけに周辺を自身の関係者で固めていった。

 その象徴が18年3月の人事。ルネサスの自動車用事業を牽引してきた大村隆司氏を退任させて、後任にかつての部下だった山本信吾氏を据えた。半導体未経験の山本氏をルネサスの主力事業のトップに据える強引な身内びいきの人事だった。

 退任した大村氏は18年9月からソニーに転じたが、それと前後して、ルネサス内部では優秀な人材の流出が加速していく。経産省には内部からの批判の声も伝わり、“呉氏包囲網”は狭まった。こうして、INCJが主導する指名委員会での解任の判断に繋がったようだ。

解任は「トカゲのしっぽ切り」
後任の柴田氏はいばらの道へ

 だが、その呉氏を社長に据えたのもINCJ自身だった。日産系列だった自動車部品のカルソニックカンセイ社長を経験し、日本電産副社長を退任したばかりの呉氏を起用したのは、日産副会長だったINCJの志賀俊之会長だ。

 当時、日本電産の永守重信会長兼社長と対立して同社を去った呉氏の起用については、「ルネサスに買収を提案していた日本電産を拒否するため」という見方も広がったが、関係者によると、呉氏は当初、INCJが買収を計画していたシャープの社長に就任する予定だったという。16年2月にシャープ買収計画がとん挫したため、急遽、空席だったルネサスのトップに呉氏を充てたのが実態だ。