オーナー・経営陣・顧客―M&Aは三位一体で
買い手企業が詳細調査をするとき、オーナーと経営陣の思惑が乖離しているとオーナーが持っている情報は手に入っても、肝心の現場情報が入らなくなります。そうなると、正しい査定ができなくなって適正な価格が算出されず、M&Aそのものが成立しなくなる可能性があります。
日本の場合、アメリカと違ってM&Aの過程でトラブルになること自体が風評被害につながる傾向があります。それによって次の買い手が現れなくなることを恐れ、オーナー側が矛を収めるケースが多いようです。
結局そうなるのだとしたら、オーナーは現場に対して株主至上主義を振りかざすのではなく、経営陣はもちろん、顧客や取引先も含めて三位一体で進めるべきです。さもなければ、中小企業においては幸福なM&Aにはなりません。
仲介会社や助言会社には、悪徳な業者もいれば、経験や知見不足で十分なサービスが提供できない業者もいます。業者の組織が大きければいいわけではなく、担当者の力量や経験、利益相反問題への取り組み体制等の課題を抱えている業者もいます。
M&Aは、オーナー経営者にとって一生に一度のことでしょう。やり直しがきくようなものではありません。最善のM&Aを実現し、すべての関係者を幸せにするためにも、業者選びは慎重に行うべきです。そして、自らも知識を身につけるべきです。そうすれば、このようなトラブルは避けられるはずです。
※次回は、経営者が抱きがちな「こんな会社、売れるわけないですよね」という誤解についてお伝えします(7月19日公開予定)。