会社が把握していなかった
不都合な事実が浮き彫りになった

 結果、作戦勝ちでした。

 たとえば、当時、ミスミは品質がいいことを自負していましたが、お客様の話をよく聞くと、「ある特定の商品においては、一定程度のハズレがあるので、それを見越して発注している」といったような事実が浮き彫りになったのです。

 たとえば、当時、ミスミは持たざる経営を標榜していました。今で言う、BtoBのシェアリングエコノミーの会社だったのです。

 しかし、ミスミの取引額が売上げの多くを占めている生産委託先は、「実質、スイッチ不能な依存状態にある」ということが浮き彫りになったのです。

 誰もがやることを、誰もやらないくらいやり切ったら、今まで見えなかったものが見え、迫力が生まれ、信頼を勝ち取ることができたのです

 これらの経験が、今となって何の意味があったのかというと、私の「仕事のプロ」としての経験の「1回転目」になったということです。

 もちろん、私が「仕事のプロ」として「仕事ができた」という意味ではありません。

 「仕事のプロ」と言うには、ほど遠かったのですが、「自ら考え、動き、成果を出す」という「一連の取り組みの1回転目」だった、ということです。

 つまり、PDCA(Plan→Do→Chrck→Action)を一回転させて、自分なりの仮設・検証をし、そこからの知見が得られたということです。

 これがこのあとの、2回転目、3回転目、4回転目と続く、「仕事のプロ」への道のりのスタートとなりました。

 【17歩目】
 ひたすら現場に出かけ、愚直に意見を聞くことで、新しい事実を掴む。

守屋 実(もりや・みのる)
1969年生まれ。明治学院大学卒。1992年にミスミ(現ミスミグループ本社)に入社後、新市場開発室で新規事業の開発に従事。メディカル、フード、オフィスの3分野への参入を提案後、自らは、メディカル事業の立上げに従事。2002年に新規事業の専門会社、エムアウトをミスミ創業オーナーの田口弘氏とともに創業、複数の事業の立上げおよび売却を実施。2010年に守屋実事務所を設立。設立前および設立間もないベンチャーを主な対象に、新規事業創出の専門家として活動。自ら投資を実行、役員に就任、事業責任を負うスタイルを基本とする。2018年4月に介護業界に特化したマッチングプラットホームのブティックスを、5月に印刷・物流・広告のシェアリングプラットホームのラクスルを2社連続で上場に導く。