米国株の主要指標であるダウ平均株価とS&P500株価指数が史上最高値を更新し、本稿執筆時点(2019年7月18日)でも最高値圏で推移している。客観的な経済情勢は半年前より悪化しているのにもかかわらず上昇しているのは、「バブル」だからなのだろうか。筆者が考える4条件に照らしてバブルかどうかを考える。(久留米大学商学部教授 塚崎公義)
バブルには2種類ある
バブルとは、経済の実態から説明できないほど資産価格が高騰することを指すが、これには2種類ある。1つは人々がバブルだと知っている場合、もう1つは知らない場合である。
昔、オランダで、チューリップの球根が現在価値に直して数千万円で取引されたことがある。これは、誰が考えてもバブルである。「現在の価格が永続することは無いだろうが、少なくとも明日は今日より高値になるだろうから、今日買って明日売ろう」と人々が考えると、価格は上がり続ける。
しかし、現在では、こうしたバブルは原則として政府と中央銀行が潰すので、大きくなるのは稀である。バブルが拡大すれば、崩壊した時の経済への悪影響が大きくなるからだ。例外はビットコインだろう。
ビットコインについては、誰も「これが正しい値段だ」と思って取引しているわけではなく、いつか暴落する可能性が高いと知りながら取引している。だから、バブルといっていいと思う。
しかし、ビットコインのバブルは、崩壊しても経済への打撃が小さいから、各国の政府も中央銀行も、敢えて潰す必要性を感じていないのだろう。
一方で最近のバブルのほとんどは、皆がバブルだと知らずに投資しているものである。米連銀議長であったグリーンスパン氏が「バブルは崩壊して、始めてバブルと分かる」との名言を残したとおりだ。
日本の平成バブル期にも、日本経済を動かしている人々の中に自宅を購入した人が大勢いた。バブルだと知っていたら、こんな時期に自宅を買うはずがない。バブルが崩壊するのを待ってからゆっくり買えばいいからである。つまり、平成バブルは「バブルだと知りながら、欲張った愚か者が踊っていた」わけではなかったのである。