「依存症ビジネス」が人を操る6つのテクニック
行動嗜癖には6つの要素がある。
第1に、ちょっと手を伸ばせば届きそうな魅力的な目標があること(第4章「目標」)。
第2に、抵抗しづらく、また予測できないランダムな頻度で、報われる感覚(正のフィードバック)があること(第5章「フィードバック」)。
第3に、段階的に進歩・向上していく感覚があること(第6章「進歩の実感」)。
第4に、徐々に難易度を増していくタスクがあること(第7章「難易度のエスカレート」)。
第5に、解消したいが解消されていない緊張感があること(第8章「クリフハンガー」)。
そして第6に、強い社会的な結びつきがあること(第9章「社会的相互作用」)。
現代の行動嗜癖は実に多種多様だが、こうした要素を必ず1つは備えている。
たとえばインスタグラムに依存性がある理由は、「いいね!」で支持される写真とそうでない写真がランダムに発生するからだ。大量の「いいね!」を浴びる体験をしたら、その報われる感覚をもう一度味わおうと、次々に写真を投稿せずにいられない。そしてつながっている友達に対しても「いいね!」しなければいけないと感じて、何度も何度もアクセスする。ゲームも同様。一部のゲームで何日もぶっ続けでプレイするユーザーが出て来るのは、ミッションをコンプリートせずにいられないから。そして、他のゲーマーたちとのあいだで強い社会的つながりが形成されるからだ。
こうした問題はどう解決すればいいのだろう。依存性の高い行動が生活の一部となっている点を鑑みて、現代人はどうやってそれらとうまく共存していけばいいのだろう。
アルコール依存をやめようとする場合は、酒の出る場所に足を踏み入れないよう注意するものだが、ネット依存をやめようと思っても、日常生活ではどうしてもメールを使わざるを得ない。パスポートを申請するにも、就職活動をするにも、働きはじめてからも、メールアドレスは不可欠だ。コンピューターとスマートフォンを使わないでできる仕事は減る一方。依存症状をもたらすテクノロジーは、むしろ薬物だったら実現しないような形で、一般社会の一部になっているのだ。
これらすべてをシャットアウトするわけにはいかないが、だからといって対策がないわけではない。依存性のある体験を限られた範囲で許容しながら、健全な行動を促すよい習慣を根づかせていけばいい。
行動嗜癖の仕組みを理解すれば、脅威をできる限り抑えることもできるし、むしろよい方向に活用していくことも可能だ。子どもがゲームをせずにいられなくなる法則を活用して、学校での勉強をしたくなるよう促せるかもしれないし、大人が運動にのめりこむ理由を逆手にとって、老後資金を貯める動機をもたせることができるかもしれない。