「気になってしょっちゅうメールが届いていないかチェックしてしまう」
「もう寝ないといけないのに、ついスマホをいじってしまい、気づけばかなりの時間が経っていた」
このような経験をしたことはないだろうか。「いいね!」欲しさにのめり込むインスタやフェイスブック、「あと1回」が終わらないスマホゲーム、朝まで一気見してしまうネットフリックス、さらには頻繁すぎるメールチェックまで、現在、薬物やアルコールなどの物質ではなく、「行動」への依存が広がっている。この「新時代の依存症」を、心の仕組みと、私たちをのめり込ませる「依存症ビジネス」の仕掛けの両面から読み解き、さらにはその対処法まで示した『僕らはそれに抵抗できない』が発売された。ダニエル・ピンクをはじめ、世界中が絶賛(+警告)した話題の書がなぜ今重要なのか、一部引用しながら解説する。(構成:編集部 廣畑達也)
スマホにSNS、ウェアラブル端末まで
――新しい時代の「依存症」チェックテスト
手はじめに、次のテストをやってみてほしい。
これは、ネット依存度を調べる手段として活用されている「インターネット依存症テスト(IAT)」の一部だ。
合計スコアが7以下なら、ネット依存症の気配はない。8から12なら、軽度のネット依存症だ。ウェブで過ごす時間が長すぎるときもあるが、全般的には、使用時間を自分でコントロールしている。13から20なら、中等度のネット依存症。ネットとの付き合い方のせいで「ときおり、もしくは、頻繁に問題が生じている」状態である。そして21から25の場合は、重度のネット依存症と判断される。ネットが「生活に深刻な悪影響をもたらしている」と言える(本書の第3部で、スコアが高い場合の対処法について考察する)。(『僕らはそれに抵抗できない』21ページ)
やってみるとすぐに気づくとおり、7以下という人などほとんどいないのではないだろうか。意識せずについ新着メールが届いていないかチェックしたり、布団に入っているのにSNSをチェックしていて気づけばかなりの時間が経過していたり。こうした行動は、「依存症」という病気に罹った人の行動、というよりは、我々一般の人がとるありふれた行動を指しているといったほうがしっくりくるはずだ。
ところが本書は、こうした「行動」こそが「新しい依存症」であり、現代社会を蝕む問題だという。
そんな現代特有の新しい依存症と、人が新しい依存症へと陥る仕組みを利用した「依存症ビジネス」について書かれたのが、『僕らはそれに抵抗できない』だ。
なぜ「依存症ビジネス」を問題とすべきなのか。その理由を、プロローグから抜粋してご紹介しよう。
アプリや各種プラットフォームは、充実したソーシャル体験を追い求めたくなるようにデザインされる。いや、タバコと同じく、依存症になるようにデザインされるといってもいい。すべてがそうだというわけではないが、残念なことに現在では多くのテクノロジー系プロダクトができるだけ常習させるように作られている。(同xiページ)