特需ピークアウトの瞬間に
福島名門ゼネコンが身売り
福島県の地場名門ゼネコンで売上高100億円超の佐藤工業は創業70年を迎えた18年の年末、準大手である戸田建設の傘下に入った。東日本大震災後の復興特需がピークアウトしたタイミングで踏み切った創業家の3代目社長はまだ40代。やはり後継ぎがいなかった。
足元の業績は好調だが、県内の市場は縮小すると見込み、100周年となる30年後を見据えて安定した会社にしたかった。M&A仲介会社から複数の企業が譲渡を希望しているとの提案を受け、最終的に戸田を選んだ。
「これまでは震災復興に集中するのが務めだと思っていた」と佐藤工業の前副社長で現社長の八巻恵一。今後、県外へ乗り出そうにも「アウェー」だ。「戸田グループに入ったことで、戸田の東北の他県や北関東の支店の支援を受けながら、福島と同じ品質で工事をやれる可能性がある」と期待を込める。
ゼネコン業界では「合併で1+1=2にはならない。メリットなし」という常識が長年まかり通ってきた。合併すると工事に入札するときの札が二つから一つになるだけ。談合が当たり前の時代には、受注が回ってくるチャンスが一つ減ることになるといわれてきた。
昨今のM&Aの増加は、吸収合併ではなく子会社にするなど、やり方次第でメリットが出せると認識されていることを意味する。商売の地域や領域がかぶらないようにしながら、買収された会社も営業活動をすれば、ビジネスチャンスは増やせる。17年以降の事例を見ると、買い手になって業容を広げたいと考える異業種も目立っている。
絶頂期にありながら、休廃業・解散数も高水準で推移している。18年は9000件を超えた。
M&A、廃業、倒産に
「後継者難」の共通点
M&A、廃業共に、後継者難が一大要因になっている。職人などの人手不足も深刻で、さらにこの先の仕事量や人手に不安を抱き、潮時と判断しているのだ。
倒産については、工事量の多い近年は総数こそ減っているが、後継者難を含む人手不足は倒産も引き起こしている。