「戦後処理」にも一苦労
ベンチャーとの協業は“悪”なのか?

 仮に、あなたが現場でこのプロジェクトを運営するリーダーだとすると、なかなか厳しい立場に立たされていることになる。そもそもこの協業プロジェクトは、自社のビジョンや戦略から生み出されたものでもなければ、現場での必要性から出てきたものでもない。漠然とした未来への期待から始まったものであり、あなたの会社には何がなんでもそれを達成しようという覚悟がない。さらには相手ベンチャーにとっては、あなたの会社との協業は、数あるプロジェクトの一つという位置づけでしかないから、相手側にも熱意がほとんどない。

 今や、初めて出会ったときの興奮はあとかたもなく消え去り、「何でこの会社とこんな仕事をやることになってしまったのだろう」と役員を、いや自分の運命を恨むような状況である。

 こうしてプロジェクトリーダーたるあなたは、どうにかしてこのプロジェクトを平和に終焉に導くことが目下の急務となる。もともとこのプロジェクトは本格的な始動前のフィージビリティ・スタディ(実現可能性の調査)であるということにして、相手企業が協業のレベルになかったとか、当社の戦略が変わって注力すべき事業ではなくなったとか、それらしい理由を捻り出して無理やりプロジェクトを終結させる。

 ところが、苦悩はここで終わらない。相手企業にプロジェクトの中止を告げねばならない。昔なら、発注者である大手企業側が強く、ベンチャーには手切れ金を少し払って終わりだったが、今はそういうわけにもいかない。何ら成果がなくとも、もともと契約した額をすべて払わなくてはならないことも多い。最近のベンチャーは、VCからの指導などもあり、結構したたかに自社に有利な契約を交わしている。結局、「敗戦処理」にも多額の費用が必要となってしまい、あなたの会社の上層部はおかんむりである。

 こんなことが重なると、ベンチャーとの協業なんて、まっぴらごめん、ということになってしまう。

ベンチャーとの協業に
失敗する大企業の3つの問題点

 ここまで述べてきたのは、あるケースを一般化したものだが、悲しいかな、上記のような目に遭っている被害者はいろいろな企業にいる。いったいどこで失敗したのか。ベンチャーが悪いのだろうか…。

 いや、なんといっても最大の問題は、自社のビジョンや戦略との整合性も深く考えずに、世間の評刊(といってもメディアで紹介されているといった程度)と名声のようなものをうかつに信じて相手を選び、安易にプロジェクトを始めたことにある。行列に並ぶ心理、ブランドものを購入する心理とでも言おうか。自社の状況をよく考えれば、選択すべきはその会社のその技術ではなかったかもしれない。