日本のIT企業の
存在感が薄れた原因

――米国集中が進む中で、日本企業の立ち位置をどう見ておられますか?

 日本のIT業界は、勃興期こそ面白いことをしていましたが、今では随分とおとなしくなってしまった印象です。大企業化も影響していると思います。

 日本の会社というか日本人は、マジメでルールを守る。それは美徳ですが、発想力が磨かれないという側面もあります。ルールを破ってでもつくろう、という強い思いがないと、新しいものは生まれないのです。道の真ん中に石があると、日本人は立ち止まって上からの指示を待つ。障害物をぐるりと回っていこうとか、現場で柔軟に発想して乗り越えようという考えがないんです。

 日本のエンジニアの英語力の低さも、遠因となっていると思います。ハードもソフトも米国からきているのに、コードすら読めないと、新しい発想も生まれない。

――事実上の無罪判決が確定するまで、4年以上かかりました。感じることがいろいろあるのではないですか。

 もちろんマウントゴックスのビットコインが盗まれたのは、自分にも責任があって、お客様をはじめ、多くの方々に迷惑をかけたことについて、心からおわび申し上げたい。また、民事再生手続きが終わるまで、できる限りの協力をしていきたいと思っています。

 ただ、ビットコインが盗まれた件とは全く無関係な、マウントゴックスの事業遂行のあり方に関して、思いもよらず逮捕され、刑事事件になったことは、とても悲しい出来事でした。しかし、素晴らしい弁護団が、4年にも及ぶ弁護を闘い抜いて、救い出してくれました。しかも、破産した私のために、無償で闘ってくれたのです。日本という国は、全体として見ると、やはり世界的にも希有な、優しさと力強さとを兼ね備えた温かみのある国だと思います。私も、ご恩返しに、この国のために尽力していきたいと思うのです。

ビットコインが盗まれた件については、米国の警察とはかなり連携して、情報提供などの捜査協力もしました。その結果、米国の警察が真犯人を捕まえてくれました。日本においても、このような捜査が可能にならなければなりません。私は喜んで協力するつもりです。

 なお、拘置所にいて良かったことが一つだけあります。7ヵ月いたのですが、することがないから、本を読むか手紙を書くかしかない。途中で、裁判資料が1万5000ページ送られてきたので、全部読んで、整理しました。おかげで、日本語能力はずいぶん上がりましたね。