“ケータイ小説”がブームとなったのは、今から3年ほど前。無名の素人が携帯電話で小説を書き、それが若年層のあいだで人気となり書籍化され、映画まで作られたのだ。
現在は当時ほど騒がれることはなく、ブームは終息したかに思える。ところが、「報道が減っただけで、人気は根強い。むしろ、利用は増加している」(池田純・ディー・エヌ・エー執行役員)という。
ディー・エヌ・エーが運営する「モバゲー」は携帯電話向けの無料ゲームとSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の大手。
モバゲーといえば、無料ゲームで会員数を増やしたというイメージが強いが、じつはモバゲー内の投稿小説コーナーは日本最大級だ。
登録作品数は伸び続け、65万作品がすべて無料で読める。1日約7.7億のモバゲー全体のページビューのうち、投稿小説コーナーが約2億を稼いでいるほどだ。
これほどの人気を放っておくのはもったいないと、ディー・エヌ・エーはNTTドコモと合弁で、投稿サービスの新会社を設立すると11月に発表した。新会社が目指すのは、課金モデルの導入だ。
作品ごとに課金するのか、あるいは読みたい作品を保管しておく“ネット上の本棚”の利用料金を徴収するのか、詳細な仕組みはこれから詰めるというが、いずれにしても、作品の人気が出れば、作家に還元できるようになるという。小説以外にも、イラストや漫画、音楽も扱う予定だ。
有料となれば、人気作家が直接作品を発表するかもしれないし、出版社が新人作家を試験的に売り出すかもしれないと、ディー・エヌ・エーは期待を寄せる。また、共同で出資するドコモの加入者のサイトへの誘導も見込める。
米国ではネット上の新聞に有料化の動きがあり、有料書籍を購入して読む電子書籍端末も人気。日本では、携帯電話で読む有料の漫画市場は急拡大している。ネットの情報は無料という常識が揺らぐ可能性もありそうだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 清水量介)