「食に関する誤った情報や古い知識があまりにも多く氾濫し、それを信じて逆に健康を害している人がたくさんいる」と心配するのは、食の教科書として大ベストセラーとなり、テレビ等でも取り上げられ社会現象にもなった『医者が教える食事術 最強の教科書』の著者の牧田善二医師。牧田医師は食事が人体に与える医学的・化学的な仕組みについて解明する唯一の科学である生化学の研究者であり、臨床ではのべ20万人の患者を診てきた糖尿病専門医でもある。その牧田医師が世界の最先端の研究成果を満載した、『医者が教える食実2 実践バイブル――20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』を著した。本連載では、その中から驚くべき食の最新情報について、一部紹介する。

その食べ方は本当に正しいのか?
ちまたに溢れる怪しい「エビデンス」

 現代はかつてない情報社会であり、「健康のために何を食べたらいいのか」という非常に重要なテーマについても、いろいろな人が自由に発信できるようになりました。でも、そこには当然、フェイクニュースまがいの怪しいものが山ほど含まれています。

 なかには、知識がないのに専門家のように振る舞ったり、間違いを説いてまわったりする困った人もいて、自分や家族の健康を真剣に考えている真面目な人々を惑わせています。

 あなたも勘違いしているかもしれない、怪しい情報の典型例を見てみましょう。

「肉を食べると心筋梗塞や脳梗塞のリスクが上がる」
「糖質制限によって寿命が縮まる」
「糖質制限は日本人には体質的に合わない」
「低脂肪の食事を心がけることで長生きできる」

 いかがでしょうか。どれか1つでも信じていたことがありませんか? 実は、これらは、すべて最新の研究で否定されています。

 ところが、今もこれらを信じている人がたくさんいます。というのも、そこでは「エビデンスがある」などと、いかにも正しそうな言い回しが用いられることが多いからです。

 たしかに、こうした情報のなかには、医学論文を引用していたり、データ数値を具体的に示していたりするものもあり、食の知性を備えた人でさえ判断を誤るのも無理のない話です。

 しかし、ここに大きな落とし穴があります。その論文の内容自体がすでにほかの研究で否定されていたり、データの信用性が乏しかったりというマイナス要素が隠されているとしたらどうでしょう。それを「エビデンス」という魅力的な言葉で、上手に覆い隠している現実があるのです。

 そもそも、エビデンスの元となる論文もピンキリで、世界的に信用度が高いのはごく一部にすぎません。

 本連載で、まず問題にしたいのは、この「エビデンス」という言葉の使われ方です。最近、みんなすぐにこの言葉を口にしますが、その真偽は曖昧なことが多いのです。

 ここで言うエビデンスとは「医学的に証明された」という意味です。たとえば、「トクホ(特定保健用食品)」と呼ばれる食品の商品広告には、「血圧が下がった」「脂肪が分解された」といった内容の文面がデータ付きで載っています。まさに「エビデンスあり」をうたっています。

 しかし、そのデータはあくまで一面的なものです。嘘ではないが、すべての真実をさらけだしているわけでもありません。

 もちろん、エビデンスは大事です。私自身もエビデンスを非常に重視しています。みなさんが、健康のために何を食べるべきかを考える上でも、エビデンスは重要な判断材料となります。しかし、そのエビデンスも100%正しいわけではありません。

 医学的・科学的研究は、1つの目的をもって行われます。そこで、一定の結論は導き出されますが、その結論が示すのは一面的なことです。どれほど素晴らしい研究結果であっても、それを「何もかも」に当てはめるわけにはいきません。「エビデンス=絶対的な真実、ではない」ということを知っておいてください。