2005年、新卒で勤めた会社をたった1年で辞めて転職した。引っ越し代でお金を使い果たしてしまった筆者は、その年の夏、安アパートでエアコンなしで過ごした。さすがに絶えられなくなり、扇風機や冷風機を買ってみたものの、焼け石に水である。

 ふと思い立って、近くの西友で風鈴を買ってきた。外からわずかに入る風に揺られて、リンリンと音を鳴らす風鈴。心なしか、少し涼しくなった気がした。耳から入ってくる清涼感が、体中に行き渡るようだった。エアコンがなかった昔の人の知恵はすごいと感心したものだ。しかし、夏が過ぎ、ようやく貯金ができてきた頃に真っ先に買ったのは冷暖房機である。やはり、エアコンがなければ日本の夏を乗り切るのは難しい。

暑くて蒸した部屋に戻るのは耐えられない

 ダイキン工業が東京生まれ・東京育ちの男女500人に聞いた「第25回 現代人の空気感調査」によると、1960年代にエアコンを必需品だと考えていた人は2.0%だったが、2019年の現在では86.4%の人が、ないと困る生活必需品だと考えている。

 エアコンの普及率が高まったからなのか、それとも東京の夏が昔より暑くなったのか。どちらにしろ、エアコンに対する人々の意識は変化していて、亡くなった戦前生まれの祖父は「体に悪いから」という理由で、家族がいくら説得してもエアコンを設置しようとはしなかったが、さすがに昨今では、そういったご高齢の方も減ったであろう(ただし、現在でも室内で熱中症になるご高齢の方はいる)。

 筆者の子どもの頃(1980~90年代)にも、「エアコン=悪」という謎の価値観がまだ残っていたように記憶している。部活動も、根性をつけるために、あえて体育館の窓を閉め切ってやるような時代だった。今では信じられない考え方である。

 さらに現在では、「夏場は外出中もエアコンをつけっぱなしにする」と回答した人が46.9%にものぼっている(「することがある」なども含む。以下同)。筆者の友人に聞いてみたところ、「部屋に戻ってきて、暑く蒸した部屋で汗だくになるのが我慢できない。少しの外出なら、つけっぱなしにしている」(30代男性)、「こまめにオンオフするより、つけっぱなしのほうが節電になると聞いたことがある」(20代女性)という声が多数あった。

 環境面などの問題も心配だが、災害級の暑さの中では、まずは自分の身を守ることが先決と思う人もいるのではないか。