ベストセラー『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』が話題の山口周氏。山口氏が「アート」「美意識」に続く、新時代を生き抜くキーコンセプトをまとめたのが、『ニュータイプの時代――新時代を生き抜く24の思考・行動様式』だ。
その道のプロである専門家が、どうしても解決できない問題。それを門外漢がいとも簡単に解いてしまうことがあるのはなぜなのか。今、専門家より門外漢の問題解決力が上回る時代が訪れている。不確実な時代、これまで蓄積してきた専門的な知識や経験は、急速に価値を失っているのだ。
切り替わった時代をしなやかに生き抜くために、「オールドタイプ」から「ニュータイプ」の思考・行動様式へのシフトを説く同書から、一部抜粋して特別公開する。
【オールドタイプ】「専門家」の意見を重んじる
【ニュータイプ】「素人の門外漢」にも耳を傾ける
門外漢の問題解決力が専門家を上回る時代
――マックス・ヴェーバー
VUCA化(*2)する世界では、蓄積した知識や経験が急速に陳腐化します。これはつまり、長年にわたって専門的な知識や経験を蓄積してきた人、つまり「専門家」の地位が失墜することを意味します。
専門家というのは、長いこと特定の領域に携わったことで、その領域に関する深く、広い知識と経験を有する人と考えられてきました。
しかし、このような考え方のもとに、無批判に専門家の意見や指示に従うのは典型的なオールドタイプの行動様式になりつつあります。
なぜそのように指摘できるか。今日、このような専門家のパフォーマンスが、それと対比される「門外漢」のそれと比較して、相対的に低下していることを示す事例が増えているからです。
たとえばゲノム研究者のカリム・ラクハニらは、白血球のゲノム配列を解析するアルゴリズムの性能を向上させるためにクラウドソーシングを利用したところ、免疫遺伝学とは関係のない門外漢から多くの回答を得、そのうちいくつかの回答は、既存のアルゴリズムを大幅に上回る精度と速度を達成した、と発表しました(*3)。
この他にも、近年では、専門家が頭を抱えてきた多くの難問について、門外漢が問題を解決するという事例が数多く報告されています。
私たちは航空宇宙局(NASA)、医学大学院、有名企業などのために、クラウドを対象とするコンペティションを過去五年間で700回以上実施してきた。うち、クラウドが集まらなかった、つまり誰も問題に挑戦しようとしなかったのは一回だけだった。それ以外のコンペティションでは、既存のやり方とすくなくとも同等か、大幅に上回る結果が得られている。
――アンドリュー・マカフィー他『プラットフォームの経済学』
これは一体どういうことなのでしょうか? 資金も人材も機材も豊富に抱えているNASAや大企業のような組織は、彼らが専門とする領域について、最も高度な問題解決力を持っているはずです。
なぜ、彼ら専門家が解決できなかった問題を、門外漢の人々がいとも簡単に解いてしまうということが起きるのでしょうか。
(注)
*1 マックス・ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』より。
*3 https://hbr.org/2013/04/using-the-crowd-as-an-innovation-partner