コアの仕事とクラウドの仕事をどう組み合わせるか

 VUCA化が急速に進む世界において、組織内のコアにいる専門家と組織外のクラウドにいる門外漢をどう組み合わせていくかが企業における価値創造力を大きく左右することになります。

 本書ではすでに「希少化する問題と過剰化する解決策」という論点について考察し、オープンイノベーションの停滞が「問題の希少化」によって発生していると指摘しました。

 これはまさにコアとクラウドの役割分担に関する問題です。すなわち「問題の設定」こそがコアの役割であり、「解決策の策定」がクラウドの役割になっていくということです。

 どんなに知識と経験の豊富な組織であっても、会社の「コア=内側」と「クラウド=無限の外側」で比較してみれば、蓄積した知識量と経験量において「内側」が「外側」に勝ることはありません。

 ではなぜ、これまでの組織はコアの専門家にイノベーションを依存してきたのか。実にシンプルな理由で、これまでのテクノロジーと社会構造では、クラウドと情報をやり取りするのに莫大なコストがかかったからです。

 しかし、情報流通の限界費用が原則的にゼロとなる社会においては、コアに問題解決を依存するというオールドタイプの思考・行動様式の合理性は大幅に低下することになります。

 この点について身をもって学んだ組織の一つにNASAがあります。NASAは、長いこと太陽フレアの予測精度を高めようとして四苦八苦してきました。太陽フレアの発生に伴い、高エネルギーの粒子が太陽から発散される現象(=SPE)が起きると、放射線のレベルが宇宙空間にある機材や人員に対して、有害な水準に達しかねないからです。

 しかし、35年もの長い期間にわたって苦闘したにもかかわらず、NASAはSPEの発生、放出量、期間を高精度で予測する方法を見つけられませんでした(*4)。

 内部的な解決の道をあきらめたNASAは、それまでに蓄積したSPEに関するデータをイノセンティブに掲載することを決定します。イノセンティブは、研究開発上の課題を抱える企業が、広くインターネット上で解決策を募るための一種のクラウドソーシングプラットフォームです。

 結局、この問題について突破口を開くことに貢献した人物は宇宙物理学の知識も経験も持たない引退した無線技士、ブルース・クラギンのアイデアでした。クラギンの開発した方法によって、8時間前なら85%の確率で、24時間前でも75%の確率でSPEの発生を予測できるようになったのです。

 このエピソードは、専門家だけで凝り固まったコアに問題解決を依存しようとするオールドタイプよりも、素人を含めた門外漢の意見を専門家のそれと分け隔てなく受け入れるニュータイプの方が、このような時代においては高い問題解決能力を持つことになることを示しています。

(注)
*4 "NASA Announces Winners of Space Life Sciences Open Innovation Competition," NASA-Johnson Space Center-Johnson News,
http://www.nasa.gov/centers/johnson/news/releases/2010/J10-017.html (accessed Oct 30, 2018)

(本原稿は『ニュータイプの時代――新時代を生き抜く24の思考・行動様式』山口周著、ダイヤモンド社からの抜粋です)