官邸主導が引き起こした
霞が関のモチベーション低下

 敵か味方しかいない政界で生き残る術には、裏切らない味方を見分ける力が必要だ。今、テレビで政治評論家として大活躍の東国原英夫・元宮崎県知事は、政界入りする際、こんなアドバイスを受けたという。

「3人でいい。絶対に自分を裏切らない仲間をつくれ。だが、3人つくるのも至難の技だぞ」

 安倍が心底信頼している人間が何人いるのかは、わからない。だが、そうした「仲間」たちに要職を任せて初めて、「アベノミクス」をはじめとした、安倍自身の政策実現につながったというのだ。

「安倍さんはマクロ経済政策を大転換させたわけです。それまでのように財務省をブレーンとしていたら決してできなかった。だから、側近中の側近である今井尚哉・政務秘書官の出身省庁である経産省に切り替えたのです。」

 安倍に事実上、首相ポストを禅譲した小泉首相の時代から、政官界の潮流は変わってきていた。小泉首相は逆に、財務省をブレーンとして、丹呉泰健・元次官を5年も秘書官として官邸に留め置き、周囲を戸惑わせた。

 小泉から始まった、官僚を官邸に抱き込んで政策を生み出すスタイルは安倍政権ですっかり定着した。今や官邸は、経産省出身の官僚だらけだ。

 負の側面とは、安倍政権のスタイルにそぐわなければ、官僚個人のみならず、省庁も干されるので、皆が必要以上に官邸の意向を気にするようになったことだろう。また、同じ省の官僚でも、安倍政権が推進している政策に貢献しているか否かで評価が変わるため、省を無視して官邸の顔色ばかり窺う「官邸官僚」が生まれた。

 中には、自らの立身出世の踏み台として、国民を見る官僚すら出てきた。安倍スタイルにそぐわない官僚は、本来の能力を全く発揮できずに息をひそめて生きている。これでは、新しいアイデアは生まれにくい土壌をつくっていることにもなる。

 安倍は、ユーチューブやSNSを積極活用し、ファッション誌まで巻き込んで情報発信や党のイメージ変革に熱心だが、これらのメディア戦略も小泉政権の延長線上にある。

 霞が関全体でみると、明らかにモチベーションが下がっている。そのあたりをどう是正していくのかが、安倍に残された課題のひとつだろう。