彼女は転職し、即戦力としてその会社に入社していた。キャリアが長く、当初は自信をもって仕事をしていたが、以前の職場の仕事の進め方には独特のやり方があり、新しい職場とはいろいろと違う面があったことから「そこは変えてください」と周囲から指摘される場面が続いた。

 新人である有里子さんに指導していたことを、その場で否定されたときのうろたえぶりは、見ていてつらくなるほどで、その頃から、体臭がきつくなりだした。

 後輩の面倒見のいい女性で、よく一緒にランチを食べたが、食欲がなくなるほど臭う日もあった。

 決定的な出来事は、得意先のイベントに駆り出されたときに起きた。真面目だが不器用な彼女は、勝手の知らない場所で要領よく立ち回ることができず、先方を怒らせてしまった。

 どちらかといえば、非は先方にあったが、「出入りの業者」としかこちらを見ていない若い女性社員は、「連帯責任」だと言って有里子さんたちを一列に並べて立たせ、1時間にわたって説教した。その間、1人、顔を真っ青にさせながら、ストレス臭を発生させていた彼女は、翌日から出社しなくなり、結局会社を辞めてしまった。

(今の私はどうなんだろう)

 その女性のことを思い出しながら、自問自答する有里子さん。実は、ちょっと前には血尿が出て、病院で検査を受けたが、結果は異常なし。

(結局、体臭も血尿も、心と体のSOS。もう限界ってことなのかな)

 転職の決意がようやく固まった。

(医療ジャーナリスト 木原洋美)