先日発表した、小売り事業会社である東電エナジーパートナー(EP)が、海外初としてタイに現地法人を設立し、エネルギーサービスを手掛けるのも、新しい取り組みをアピールする狙いがあるとみられる。

 さらに小早川社長は近々、“電化戦略”なるものを発表する方針という。ここでAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を駆使し、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)などの分散型エネルギーを活用した「スマートシティー」で中心的役割を担うなど、将来の電力ビジネスの姿を示したいようだ。

柏崎刈羽が再稼働できないまま
国による中計評価は棚上げ濃厚

 今年度は、機構が新々総特の進捗状況を評価する期間でもある。新々総特では、福島第一原発の廃炉に8兆円、被災者への賠償に8兆円、除染・中間貯蔵に6兆円の計22兆円が必要と試算している。

 これに向けて、東電HDは、2017年度から10年平均で廃炉・賠償費用を5000億円程度確保した上で、東電グループの主要4社で1600億~2150億円の連結経常利益を上げると目標を定めた。

 2018年度決算は、連結経常利益がグループ4社で2765億円で新々総特の目標水準を上回った。一見すると、順調なようにも思える。

 しかし、主力である電力小売り事業は、2016年4月に始まった電力小売り全面自由化による競争激化の影響で顧客を奪われ、販売電力量は3年連続で前年割れだ。19年度に入ってからも販売電力量の減少に歯止めがかかっていない。

 また新々総特では、新潟県の柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働を19年度から見込んでいたが、再稼働に慎重な姿勢を見せる立地自治体の動向もあり、小早川社長は「残念ながら、今年度の再稼働を見通せる状況ではない」と認めた。1基あたり最大で約900億円のコスト削減につながり、“利益改善装置”ともいえる原発を再稼働できないのは大きな痛手だ。

 東電関係者は「要は新々総特の評価はできないということ。だって柏崎刈羽の再稼働ができないんだから」と打ち明ける。

 つまり、新々総特の評価は“棚上げ”される可能性が濃厚だ。そんな状態で東電HDは今秋から次の中期経営計画の策定作業に入る見込みで、小早川社長が掲げる電化戦略を次の中期経営計画の目玉として打ち出すとみられる。

 東電HDの最大のミッションは、福島第一原発の廃炉、被災者への賠償、福島の復興の完遂である。そのためにお上の顔色うかがいではなく、しっかり稼ぎ続けられる戦略を描かねばならない。

(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)