米中対立に緩和の兆候は見られない。9月1日には、中国からの輸入品3000億ドル分のうちスマートフォン、パソコン、玩具などを除く品目への10%の関税賦課は確実である。となれば、9月にFRBが利下げに踏み切らなければ、市場の失望を招き株価は急落しかねない。パウエルFRB議長としては不本意かもしれないが、利下げせざるを得ないだろう。

 すでに多くの関係者に指摘されていることだが、FRBの利下げがトランプ大統領の中国へのさらなる強硬措置を招く悪循環に陥りそうだ。

FRBの利下げ継続は
中国経済も支えることになる

 今後も、各国中銀による利下げ競争は続くだろう。9月18日のFOMCより前の12日に、ECB(欧州中央銀行)の理事会がある。7月の理事会後の記者会見で、ドラギ総裁はすでに利下げを示唆しており、0.1%の利下げは確実だろう。

 ユーロ圏の経済状況は悪化している。4~6月期のGDP(国内総生産)は前期比0.2%増となり、1~3月期の0.4%増から伸びが半減した。イタリアはゼロ成長となり、要であるドイツの4~6月期はマイナス成長となる見通しだ。輸出先である中国経済の減速が大きく響いている。10月のラガルド新総裁就任後は、量的緩和再開も視野に入ってくるだろう。

 政策金利だけではなく、主要国の長期金利も低下している。米国10年物国債利回りは一時1.6%割れした。これは中国にメリットをもたらす。他国の金利低下で、中国が最も恐れる人民元安の進展から資本流出が加速する可能性が低くなるからである。資本流出を懸念することなく、景気刺激のためにさらなる金融緩和、緩やかな人民元安を進めていく余地ができる。

 現に、1ドル=7元を突破したことで、加速的な人民元安の進行が懸念されたが、世界的な金利低下が進んだこともあり、急速な資本流出といった混乱は起きていない。

 その意味で、トランプ大統領の対中強硬策による景気減速を背景としたFRBの利下げは、中国が金融緩和と緩やかな人民元安を進め、景気を支えやすくするという皮肉な状況をつくり出している。FRBが利下げすれば、金融緩和と緩やかな自国通貨安が進めやすくなるのは、中国以外の新興国も同じである。

 緩和競争が続くことは、日本銀行を苦境に追いやる。他国の金利水準が低下することは円高圧力となるが、量的緩和、マイナス金利と金融緩和を強力に進めてきた日銀には、さらなる緩和の余地が乏しい。

 とはいえ、1ドル=100円を割るような円高が進めば、日銀は量的緩和の拡大、10年物国債利回りの誘導目標の引き下げ、容認幅の拡大、ETF(上場投資信託)の購入額の増額など金融緩和に踏み切らざるを得ないだろう。ただ、それは今後景気が悪化した際の刺激策の先取りである。結果として選択肢が狭まり、日銀はさらなる窮地に追い込まれることになる。