金や安定配当株、円といった安全資産が買われていることは、貿易摩擦や世界成長の鈍化を巡る投資家の不安を浮き彫りにしている。
米国の主要株価指数は記録的な水準近辺にとどまっているが、その一因は同国経済の好調が続いていることだ。しかし、経済に敏感な市場の指標は今後の低迷を示すシグナルを発している。
ビアンコ・リサーチを率いるジェームズ・ビアンコ氏は「相場のムードは現在、非常に不確かだ」と述べた。「一度に多くのことが起きており、投資家はどう解釈すべきか確信を持っていない」という。
先進国の国債相場が7月以来上昇していることから、欧州では利回りが過去最低に低下し、マイナス利回り債券の世界残高は15兆ドルを超えている。世界で最もパフォーマンスの良い主要通貨は、以前から神経質な投資家に人気の円だ。金は約6年ぶりの高水準にあり、その年初来上昇率はやはり2桁上昇のS&P500指数を上回っている。金と同指数の年間上昇率が2桁を記録した年は、過去40年間に4回しかない。
S&P500の中で過去1カ月に上昇したセクターは、不動産、生活必需品、公益事業だけだった。不安定な時期には、投資家は比較的安定した利益と高配当を理由にこうしたセクターを選好する傾向にある。
投資家はこの1年、世界経済の減速が10年にわたる米国の景気拡大に終止符を打つとの懸念を抱えてきた。これまでの兆候は経済成長の継続を示しているが、景気後退の兆しがはっきりした時に備えてヘッジをかける運用マネジャーが増えている。
投資家は今週、前回の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を分析するだろう。連邦準備制度理事会(FRB)が貿易摩擦による経済的影響に備えるため利下げを続けるとの見方が多い。ジェローム・パウエル議長がジャクソンホールで行う講演での発言も相場を動かし得る。