「資本自由化」を選べない中国
外資による私有化を警戒

 中国で自由な資本移動を許すことは、国内の土地を外国資本が買うことを容認することになり、土地の私有化を許すことにもつながる。

 中国共産党にとっては許容できないことであり、そうした背景があるので、中国は必然的に、(1)自由な資本移動を否定し、(2)固定相場制と、(3)独立した金融政策になる。

 米国はこうした中国を「為替操作国」というレッテルを貼り、事実上、固定相場制を放棄せよと求めるわけだ。これは中国に、自由主義経済体制の旧西側諸国と同じ先進国タイプになれと言うのに等しい。

 中国が「為替操作国」の認定から逃れたければ、為替の自由化、資本取引の自由化を進めよというわけだが、為替の自由化と資本移動の自由化は、中国共産党による一党独裁体制の崩壊を迫ることと同義だ。

 今回の措置は、ファーウェイ制裁のように、米国市場から中国企業を締め出すための措置だと見る向きもあるが、筆者にはそれにとどまらない深謀遠慮があるように思われる。

共産党体制揺るがす
米国の凄まじい戦略

 資本の自由化が実現すれば、中国から富裕層が国外に逃げ出し、資産を移す可能性がある。中国にとっては、共産党独裁体制の崩壊につながりかねない。

 かつて日本は米国に迫られ、資本や金融の自由化を受け入れた。日本が安全保障を米国に委ねていたから、米国と決定的に対立することはできなかったし、自由化を受け入れれば国内の体制は守られた。

 しかし、米国との覇権争いを繰り広げる中国にとってはこの話を絶対にのむことはできないものだろう。

 もっとも「取引(ディール)」が大好きなトランプ大統領は、中国の国家体制をつぶすつもりはないだろう。来年の大統領選に有利になるように、中国問題を使えればいいということだと思われる。

「為替操作国認定」という高すぎるハードルを突き付け、徐々に条件を緩めながら、貿易や安全保障などの交渉で譲歩を迫っていこうとしているのだろう。

 北朝鮮との非核化交渉で、金正恩体制の維持をカードとして使ってきたように、中国に対しても「国家体制の保証」をカードに使うことも考えているのかもしれない。

 中国の「為替操作国」の認定の裏には、こうした凄まじい戦略が隠れていると筆者は見ている。

(嘉悦大学教授 高橋洋一)