名医やトップドクターと呼ばれる医師、ゴッドハンド(神の手)を持つといわれる医師、患者から厚い信頼を寄せられる医師、その道を究めようとする医師を、医療ジャーナリストの木原洋美が取材し、仕事ぶりや仕事哲学などを伝える。今回は第15回。1980年代から痛みの知識や理論の探求に励み、90年代、ほぼ独学で筋肉のコリにアプローチする「トリガーポイントブロック」療法を完成させ、慢性腰痛など「慢性的な痛みの名医」といわれる加茂整形外科医院院長の加茂淳医師を紹介する。(医療ジャーナリスト 木原洋美)
ヘルニア、狭窄(きょうさく)を手術しても
慢性腰痛は治らない
「日本の痛み治療は間違っている!」
石川県で加茂整形外科医院を開業する加茂淳先生は、20年近くもの間、主張しつづけてきた。
この10年ぐらいでようやく、「集学的痛みセンター」を設置する大学の医師・研究者からも同様の声があがるようになったが、それまでの長い間は孤軍奮闘だったのではないだろうか。加茂先生の主張はそれほど、日本の痛み治療の常識を覆すものだからだ。
例えば、整形外科の主な治療対象である以下の病気や症状…
腰痛、肩こり、首の痛み、椎間板ヘルニア、頸椎(けいつい)ヘルニア、腰椎すべり症、頸部脊柱管狭窄症、骨の変形、座骨神経痛、梨状筋(りじょうきん)症候群、頚椎症、変形性ひざ関節症、半月板損傷、変形性脊椎症、腱板断裂(けんばんだんれつ)、テニスひじ、腱鞘炎(けんしょうえん)、ひざ痛、五十肩、外反母趾(がいはんぼし)、腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)。
「もし、こうした診断を受けて痛みが3ヵ月以上つづく場合、本当の病気は『慢性痛』かもしれません。ケガが治り、炎症も治まっているのにもかかわらず、痛みがなくならない状態は、じつは慢性痛という病気なのです」と先生は言うのだ。