「慢性腰痛の名医」がMRIを撮らないで治療する理由とは?写真はイメージです Photo:PIXTA

「先進国中、最も遅れている」とされる日本の慢性痛医療の世界で、1980年代から痛みの知識や理論の探求に励み、90年代、ほぼ独学で「トリガーポイントブロック」療法を完成させ「慢性腰痛治療の名医」といわれる加茂整形外科医院・加茂院長の治療法の特徴を紹介する。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

問診に時間をとる
MRIには頼らない

◎加茂院長の治療 5つのルール
1.問診重視、レントゲン、MRIには頼らない
2.ケガの治療より痛みの治療が先(全身麻酔の手術でも局所麻酔を)
3.トリガーポイントブロック注射(神経ブロック注射とは違う)
4.基本は「認知行動療法」=心配しないでよく動かすようにすること
5.いつも心に「ドクターズルール10」

「私は、慢性腰痛で受診された患者さんのMRIは撮りません。筋肉のこわばり、疼痛、トリガーポイントは、画像診断装置では写せないからです」

 全国から「何をやっても治らない腰痛患者」が殺到している、石川県小松市にある加茂整形外科医院の加茂淳院長はきっぱりと語る。高度で専門的な腰痛治療をウリにする施設の多くが「MRI・CT・レントゲンの画像検査」に重きを置いているのとは真逆の印象だ。

「MRIなどの画像診断や血液検査は、患者さんの痛みが、悪性腫瘍、感染症、骨折などの明らかな外傷、リウマチとその周辺の炎症性疾患が原因なのか否かを見分けるために行うものです。当院を受診される患者さんの場合、検査も治療もやり尽くした方ばかりですので、まず必要ありません。第一、画像では痛みのことは何もわかりませんから。ムダな検査で、患者さんに負担をかけたくないというのもあります。

 代わりに、たっぷり時間をかけて行うのは問診です。

 その痛みやしびれが、どのような状況で強くなったり弱くなったりするのかを、じっくりと伺います。これを『積極的診断』といいます」