中国が民間の技術力を活用して国防力を強化する「軍民融合」を推進する中、経済産業省が安全保障的な視点から技術・産業戦略を推進する司令塔組織を新設したことが、ダイヤモンド編集部の取材で27日までにわかった。人工知能(AI)やロボット、半導体といったハイテク領域を特に念頭に置き、こういった領域を振興しながら、技術流出を阻止する戦略を実施する。電子機器メーカーなど企業にとっては、これまで以上に政策との協調が求められることになる。米中では近年、国益を実現するために経済活動をコントロールする動きが活発化しているが、日本にもこの動きが広がっている。(ダイヤモンド編集部 杉本りうこ)
中国は安全保障の意図を
産業政策に盛り込んでいる
新設されたのは「経済安全保障室」。6月2日付けで、大臣官房内の組織として設置された。大臣官房には複数の組織にまたがる業務を調整する機能がある。新設された経済安全保障室も、輸出を管理する貿易管理部や各産業の担当部署など複数の組織と連携しながら、戦略の構築と遂行を担う。担当幹部は貿易経済協力局長の保坂伸氏。現在は15人(兼務を含む)が新組織に所属している。
中国の軍民融合戦略は、2006年ごろに始まった。戦闘機のような軍事兵器の開発のほか、サイバーセキュリティーや社会監視システムなど、より幅広い意味での国防領域で実施されている。全国人民代表大会(全人代=国会に相当)の常務委員会は2018年9月、「軍民融合発展法」の立法計画を発表しており、中国政府は軍民融合をさらに推進する方針だ。