日本企業は米中両国で市場とテクノロジーにアクセスを求める国です。ファーウェイ問題によってグローバルサプライチェーンのリスクが露見したわけですが、なりふり構わず覇権を争う米中が、何を成長機会や脅威と考えているのか。日本は政策と協議の経緯を把握し、今後のリスクを予見する必要があります。そこで米中の過去5年ほどの政治的経緯を時系列で見てみましょう。

米中双方につながりある日本
両国の政策を把握することは必須

 13年に中国の習近平指導部は、「一帯一路」の計画を発表しました。かつてのシルクロードを模し、各国のインフラ整備を中国主導で陸海両方から行う内容です。この時点では具体的な計画が発表されたわけではなく、中国内外への政治的スローガンの意味が大きかったといえます。この計画によって、戦後の国際秩序における米国の主導的な立場を、中国がそのまま代替しようとしているかどうかについては、研究者の間でも議論があります。しかし米国と西側諸国は、国際秩序に対する経済的・拡張的野心を中国から感じ取り、現在の摩擦に至っています。

 続いて15年5月、中国国務院(日本の内閣に相当)は産業政策として「中国製造2025」を発表しました。中国建国100周年の49年までに、世界の製造業のトップとなる「製造強国」を目指しています。10の重点政策分野の中には、5Gや人工知能(AI)、ロボットといったデジタルテクノロジーが含まれています。この内容によって、米国はテクノロジー分野での中国への警戒を一層強めました。

 これに対し17年12月、トランプ米大統領は「国家安全保障戦略」を発表しました。この中で中国とロシアを、「米国の国益や価値観と対極にある世界を形成しようとする、修正主義勢力」と名指しで批判しています。また、「新たな敵は新たな脆弱性につながる。われわれは主要なインフラとデジタルネットワークを守るための取り組みを一層強化する」として、米国第一主義の政策に取り組むことを明示しています。この戦略で米国は明確に、中国への対抗とデジタルネットワークの保護を宣言したのです。

 この時期、シンガポールの半導体メーカー、ブロードコムによる米同業クアルコムへの敵対的買収が進められていました。買収額が11兆円ともいわれたこの案件は、CFIUS(対米外国投資委員会)の安全保障上の理由に基づく勧告を受け、大統領令によって差し止められました。CFIUSは外国企業による米国企業への投資を審査する機関です。米国の重要インフラや基盤技術に対し、外国企業や投資家が実質的な影響力を持つか否かを基準に、差し止めを勧告できます。ブロードコムの場合は、大口顧客のファーウェイを抱えることが審査において問題視されたようです。