今後のビジョンは不明瞭
これから始まる“いばらの道”

 店舗の立地策定を含めれば、およそ10年の歳月が流れたことになるだろう。この間における上海高島屋を取り巻く経済環境の変化は大きい。「これまで黒字化したことがない」(同社広報)のも、変化する経営環境に売り場づくりを反映させることができなかったためだろう。

 今なお、同店は「品揃えの3~4割は直輸入した上質な日本製品で占める」(同社広報)という。しかし、筆者のヒアリングの限りでは、輸入物の日本製品に強いニーズはない。また、開店当初は日本ブランドへの人気が高まる時期にあっただろうが、誰もが訪日旅行を経験し“日本価格”を知ってしまった。以後は「日本製品ならば高くても売れる」という発想は通用しにくいものになってしまった。

 だからこそ、これからの上海高島屋がどう生まれ変わるのかは、上海在住者なら誰もが知りたい関心事である。筆者は、同社広報に「今後の売り場づくりにどんな変化があるのか」という質問をさせてもらったが、残念ながら明確なビジョンを示してもらえなかった。再スタートを切る同店の勝算は、会計テクニック以外に見えてこない。

「最終日には、記念に店の前で一緒に写真を撮ろう」――利用者の中には同店との別れを惜しむ人さえいた。同店のポリシーが「地域に必要とされる店」にあるのだとしたら、利用者やテナントの“率直な思い”をもう一度紡ぎ直して、魅力ある売り場づくりに活かしてほしいと思う。