閑古鳥が鳴いていた上海高島屋でも
「デパ地下」だけは人気だった

“食”が人を集めるのは、中国の上海高島屋にも共通する。上海高島屋百貨有限公司の清算騒動(「上海高島屋、撤退取りやめて『継続宣言』も前途はいばらの道」参照)は物議を醸したが、6年半前の開業時から一度も黒字を出せず、長らく「閑古鳥が鳴いている」と言われ続けていた同店で、唯一賑わいを見せていたフロアが“デパ地下”部分だった。

 同店の、食品スーパーやベーカリー、スイーツなどの売り場の充実ぶりには定評があった。6月の撤退宣言に近隣の住民は「残念なのは、“デパ地下”にあるパン屋の『ドンク』やサラダ・惣菜の『Rf1』がなくなってしまうこと」だと悲しんだ。上階の飲食街には日本料理店やラーメン店が出店しており、昼食時になれば、近隣のホワイトカラーで席が埋まった。多少値が張っても、おいしいものにはつい財布のひもを緩めてしまう――食のフロアには中国人たちの特徴ある消費動向がはっきりと映し出されていた。

 ちなみに昨年、高島屋(高の文字は、正式には“はしご高”)はバンコクの大型複合施設の中にアンカーテナントとして初出店した。華々しい幕開けだったが、ほどなくして「(同店が立地する)チャオプラヤー川西岸に行くのは不便」という声が出始める。上海高島屋同様、日本人居住者の間で話題になったのは、むしろその“立地”だった。

 衣料品あり、日用品ありのフルラインが日本の百貨店のモデルだったが、アジア全体の市場を見渡せば、“百貨型”の売り場構成はもはや新鮮さを失いつつあるのだろうか。昨夏、筆者はベトナム・ハノイのロッテデパート(韓国系)を視察したが、日本型の百貨店構造に酷似した同店もまた、地下の食品スーパーだけが賑わっており、一階から上の婦人服・紳士服売り場では買物客をほとんど見かけることはなかった。

 レジャーサービス研究所(本社:東京・渋谷)の斉藤茂一所長の指摘は興味深い。なんと、中国資本の百貨店では売り上げの半分を「食が占める」というのだ。斉藤氏は「あくまで私がコンサルした範囲ですが」と前置きしつつ、次のように語る。

バンコクのショッピングモール。巨大なフードコートには昼前から人が集まる

「北京の百貨店の売上構成比は、実に58%を飲食が占めています。地方では、朝7時に開店して朝食ニーズまで取り込む百貨店もあります。お客さんは朝・昼・晩の食事のために百貨店を訪れるのです。中国では、売り上げを支えているのは物販ではなく飲食であり、これが集客の原動力になっています」

 メインは飲食、物販はサブ――この傾向は中国のみならず、アジア市場全体にも共通するのかもしれない。

 アジアの人々が最も喜びと感じ、消費を惜しまないのは“食”をおいてほかにはない。“百貨”から“一貨”に絞り込むのはさすがに極端な話だが、「思い切った発想の転換が必要」だと斉藤氏もいう。いかに“食”に光を当てるかが、日系百貨店にとっての起死回生のカギとなりそうだ。