SBI生命社長に転身した大物官僚が掲げる「2方面戦略」の中身

2019年4月1日、かつて金融庁の保険課長や総務企画局総括審議官、関東財務局長などを歴任してきた大物官僚、小野尚氏がSBI生命保険の社長に就任し、保険業界にどよめきが起こった。その小野社長に、SBIグループに入った経緯とSBI生保の今後の運営について話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)

――SBIグループに入社した経緯は?

 偶然の偶然です。2年半前の2017年2月に金融庁、財務省を退官しましたが、その際には、ほかの仕事をしようと思っていました。その後、大学の同窓会でSBIの社外取締役を務めている友人に会い、退官したことを話しました。すると、彼が北尾(吉孝・SBIホールディングス社長)さんに話したんですね。年明けにその友人から、北尾さんが会いたいと言っていると連絡がありました。

――北尾さんとの面識はあったのですか?

 もちろん、ご高名は聞いていましたが、会ったことはありませんでした。その場で、北尾さんから、うちに来ないかと誘われました。当時は金融と違うことをやっていましたが、財務省といいながらもずっと金融行政が長く、銀行や証券、保険を担当していました。そうした複数の金融事業をSBIグループは全部持っているので、面白い会社だなあと思っていましたので、そこに惹かれて昨年の4月に入社したというわけです。

小野尚SBI生命保険社長大蔵省(現財務省)に入省し、保険課長や総務企画局総括審議官、関東財務局長などを歴任。退官してしばらく後にSBIグループ入りした小野尚氏 Photo by Jun Takai
【金融行政が長い小野社長の経歴】
小野 尚(おの・ひさし)
1959年10月17日生まれ
1983年4月 大蔵省(現 財務省) 入省
2003年7月 金融庁 検査局 総務課 調査室長
2004年7月 同庁 監督局 保険課長
2006年7月 財務省 国際局 地域協力課長
2008年7月 金融庁 総務企画局 信用制度参事官 2010 年7月 同庁 総務企画局 企画課長
2011年8月 同庁 総務企画局 参事官(信用担当) 2012 年8月 同庁 総務企画局 参事官(監督局担当) 2014 年7月 同庁 総務企画局 審議官(企画・市場・官房担当)
2015年7月 同庁 総務企画局 総括審議官
2016年6月 財務省 関東財務局長
2017年7月 同省 退官
2017年10月 Profit Cube Inc. 顧問
2017年10月 ミュージックセキュリティーズ顧問
2017年12月 日本信用情報機構 常務執行役員
2018年4月 SBI ホールディングス顧問
2018年6月 日本信用情報機構 取締役
2018年6月 SBI ホールディングス常務取締役
2019年4月 SBI生命保険社長(現在に至る)

入社後一年が経過した後に
突然のSBI生命社長の打診

――SBI入社後は何をされていましたか。

 SBIホールディングスの仕事をしていました。SBIはグループとして地域金融機関との連携に力を入れていますので、その関係が中心です。また、途中からグループ内にできたフィンテックの会社、SBIネオファイナンシャルサービシーズや、日本の課題といえる事業承継の会社、SBI地域事業承継投資もできたので、そこの取締役などを務めながら1年間を過ごしていました。すると、今年4月に突然、SBI生命保険の社長をやってくれないかとの打診があり、お引き受けすることになったのです。SBIグループに入るときには、まさか私が生命保険の業務を担当するとは夢にも思いませんでしたが(笑)。