池田 社員のやる気を促そうと思ったら「テイク→ギブ」ではなく「ギブ→テイク」でいかなければいけないということですね。しかし、戦後の日本の企業社会で生きてきた人たちの中には、先に我慢しておけば後から得をすると考える人も多いように思います。

松本 戦後の日本の成長は、1955年くらいから始まってせいぜい40年程度続いたにすぎない。僕はそれを「異常な40年」と呼んでいます。年功序列、終身雇用、定年退職制度。そういう仕組みがたまたまうまく機能していた時代です。確かに、その仕組みの中では、若い頃に安月給でも我慢して働けば、年を取るに従って給料が上がるのが当たり前でした。まさしく「朝三暮四」ということです。しかしそんな仕組みは、これからの時代には通用しません。時代は変わってしまいました。

変革とは既得権益を剥奪すること

 特別対談:RIZAPグループ特別顧問・松本 晃×横浜DeNAベイスターズ初代社長・池田 純
池田純氏

池田 ベイスターズやその後の経験から、本当に変革を目指す人が組織のトップに立つのは非常に難しいのが日本という国だということを強く感じています。

松本 変革というのは既得権益を剥奪することです。お金、権限・権力、地位・身分──。それらを剥奪すること、力ずくで剥奪することが、すなわち変革です。例えば、ダイバーシティー。これは端的に言って、男性から既得権を剥奪することです。しかし、組織を良くしたいならば、トップはそれをやらなければならない。

池田 剥奪できるものとできないものがあるのではないでしょうか。

松本 池田さん、若さがないね(笑)。そんなもん、できますよ。剥奪すべきものは全てむしり取らないといけないんですよ。そのくらいのことをやらないと、変革などできっこありません。もちろん、それにはまず自分が既得権益を捨てないといけません。それが最初です。

池田 「経営トップ」というポジションも一種の既得権益です。それもある時点になったら自分から捨てなければならないわけですよね。経営トップでいる期間は何年くらいが最適だと思われますか。

松本 8年ですね。10年じゃ長いです。権力は10年で必ず腐敗するというのが僕の持論です。最初の2年で変革の方向性を固めて、次の2年で変革を実行して、その次の2年で完成させる。だから本当は6年でいいんだけれど、それだとやり切れず消化不良になる可能性があります。それで、社長を辞めた後で会長職として居残ったりすることになる。しかし、8年あれば全てをやり切ることができます。結果、スパッと辞められるわけです。

池田 僕はベイスターズの社長を5年やりましたが、確かに消化不良のところがありますね。後継者の育成や任命についてはどうお考えですか。

松本 私は後継者を育てません。任命もしません。自分で育てたり、選んだりすると、その人に面倒見てもらいたくなるでしょう。そうすると、その会社とのつながりが続いてしまう。だから、私は後継者選びには関与しません。引き継ぎ書も書きません。そんなもん書いたって誰も読みませんよ(笑)。自分の仕事を全てやり切ったら、後は次の人たちに全て委ねる。それがプロ経営者の在り方だと思いますね。