「いいね!」はスロットマシーンと同じ原理

――人を行動嗜癖にするのに使われるテクニックには、どんなものがありますか。

 たくさんありますが、主なテクニックはスロットマシーンをする経験に似たもので、予期しない褒美を与えることです。実は、ソーシャルメディアの「いいね!」もそれにあたります。ソーシャルメディアで1万人のフォロワーをつくろう、などと恣意的なゴールを導入することもそうです。自分がオンラインに投稿したときに、他の人に「いいね!」をクリックしてほしいとか、今度は他の人が投稿したときに自分が「いいね!」をクリックするとか、ソーシャル・フィードバック・ループを築くとか、こういう仕掛けにスクリーン上で対抗するのは難しい。

――ソーシャルメディアのおかげで人は以前よりもお互いにつながっていると思っているかもしれませんが、私はその逆だと思っています。ソーシャルメディアのせいでつながりが以前より皮相的になっている。実際、人は以前よりも孤独で、だからこそソーシャルネットワークを利用してつながりたいと思っているかもしれません。だから「いいね!」をクリックしあいたがるのではないでしょうか。

 その通りです。ソーシャルメディアによるつながりは、すでにコミュニケーションをとっている人が遠くにいるときとか、家族の一員が旅行しているときなどは、何もつながる手段がないよりはいい。でも時間のほとんどをオンラインでつながることに費やしていると、直接会って一緒に過ごして、深くコミュニケーションするときに欠かせない、微妙な感情の機微を認識することから生まれる親しみや恩恵はありません。これはスクリーン上でのやり取りでは不可能です。